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デジタル広告のリスクマネジメント

成果はある程度コントロールできる、気になるのはいかにブランド毀損を防ぐか

ロクシタンジャポン

デジタルコミュニケーションの「リスク」には、実にさまざまなものがあります。デジタル広告が「ブランドの毀損」につながるリスクについて、ブランドを大事にするコスメという商材であり、なおかつグローバルでデジタルマーケティングを強化するロクシタンに、実感を聞きました。

ロクシタンのデジタル広告のうち、現在、投資規模が最も大きいのはLINE。店舗・EC送客のほか、ブランディングも目的としている。

南仏プロヴァンスのライフスタイルを提案するコスメティックブランド「L’OCCITANE(ロクシタン)」。ロクシタンジャポンは、世界約90カ国で役2200店舗を展開する同ブランドの日本法人として、1998年に設立された。全国100の店舗に加え、EC、通信販売、国内線機内販売、ホテルアメニティ、カフェ事業など、多角的に販路を拡大し、現在は世界ナンバー1の売上を誇る。ここ数年で、顧客データを活用したマーケティングの強化をグローバルで加速させており、あらゆるチャネルから得られる顧客データを統合したうえで、マーケティング戦略を一元管理する仕組みの確立を進めている。

当社がデジタル広告への投資を強化し始めたのは2010年頃、アドネットワークに続き、アドエクスチェンジが登場した頃のことです。現在では、(1)ECの刈り取りと、(2)ブランディングの大きく2軸で、さまざまな形でオンラインの広告を展開しています。

2006年に開設したECは、直近3年で売上が2倍以上に伸長した重点事業。広告投資効果はROAS(Rerurn On Advertising Spend:投資した広告費用に対する回収率。広告経由で発生した売上を広告費用で割って算出する)で評価しており、購入見込みの高い顧客を刈り取る手段として、デジタル広告は非常に効果があると感じています。KPIであるECの売上の推移を見ながら、臨機応変にコントロールできる点もメリットが大きい。具体的には、リスティング広告や、GDR(Google Dynamic-Remarketing)やCRITEOをはじめとする動的ディスプレイ広告などを活用しています。

一方で、短期的な成果を求めない、認知拡大や話題づくり(リテンション)といった、ブランディングを目的としたコミュニケーションにも、デジタル広告を活用しています。ブランディング目的のデジタル広告においても、リーチ数や、それがどれだけコンバージョンに貢献したかは数値で把握することが可能です。従来型メディアでのブランド広告に比べ、効果が測定しやすいという点にはメリットを感じます。しかし、幅広いリーチを得ることと、ブランド価値毀損のリスクとのバランスには常に気を配る必要があると考えています。

デジタル広告の中で、いま最も投資規模が大きいのはLINEです。公式アカウントのフォロワーは1280万人(2016年6月現在)。シーズンごとの新商品の紹介や、ECや実店舗への誘客を図るプレゼントキャンペーンなど、ユーザーにとってお得な情報・ニュースを日々発信しているほか、LINEスタンプも年2回ほど制作し、新規フォロワーを増やすための起爆剤としています。本国からは「なぜ一つのプラットフォームにこれほど投資するのか」と不思議がられますが、店舗送客への貢献度や国内のアプリ浸透率などを数値で提示し、LINEを通じてロクシタンというブランドがいかにお客さまの普段の生活の中に自然に入り込むことができているかを説明することで、ようやく理解を得られるようになりました。LINEの運用型広告や、LINE NEWS DIGEST(「LINE NEWS」公式アカウントを通じて、ニュースを1日3回ダイジェスト形式で配信するサービス)の一枠に掲載する記事広告も活用しています。

公式アカウント開設当初、店舗スタッフからは「どれだけ実際の売上につながるの?」との懐疑的な声が少なくなく、店頭プレゼントキャンペーン(店頭でモバイルの画面を提示したり、オンラインショップで指定のコードを入力すると、特典がもらえるクーポンを定期的に配信している)に協力してもらうのも難しかったのですが、実際に運用を続けると、実店舗へのトラフィック効果は絶大で、「もっといろいろな企画ができないか」と相談を受けることも増えました。

アドネットワーク黎明期に感じたブランド毀損のリスク

LINEをはじめとするソーシャルメディアに力を入れ始める前は、当社のデジタル広告はディスプレイ広告とリスティング広告が主流でした。「このままでは、ブランド毀損につながり得るのでは」と危機感を覚えたのは、ディスプレイ広告の取引の現場に、アドネットワークが登場したときのことです。元々は、出稿したいメディアごとに広告枠を購入するスタイルだったのが、出稿媒体や出稿面がコントロールできなくなり、ブランド広告主の間では大きな問題となりました。

実際に致命的なブランド毀損につながった経験はありませんが …

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