世界の新聞界においても、「顧客(読者)起点」の発想の重要性に注目が集まり始めている。
「デジタル・ビジネス」という言葉が飛び交っていた。6月の第1週、イタリア・トリノで3日間開かれた世界新聞会議の会場で、だ。昨年の参加者によると、「プリント版の新聞から、デジタル版に移行しなければ生き残れない」と危機感に満ちていたという。ところが今年は、全体会議だけでなく、同時に開かれる編集者会議、広告会議も「デジタル」一色で、プリント版の話はほとんど聞かれなかった。
同会議が昨年とがらりと変わり、「デジタルで具体的に何ができるのか」という討論で埋め尽くされたのは、会議の直前に、米有力紙ニューヨーク・タイムズの内部文書「イノベーション」がオンライン上でリークされたことも後押しした。文書は、タイムズ内部でデジタル戦略を練るチームが、同社社員および競合他社社員350人以上にインタビューし、3月下旬に提案をまとめ、97ページに及ぶ。内容は、想像以上に厳しかった。まず、デジタルの世界のライバルは、新聞社だけではなく、急成長するブログニュースサイト「ハフィントン・ポスト」やソーシャルニュースサイト「バズフィード」などと位置付ける。また、ライバルの成長の速度に比べ、タイムズのデジタル版の読者は横ばい、あるいは下降傾向だと指摘し、なぜそういう状態にあるのか、社員から「ここがおかしい」という妥協なき声を聞き出している。
「ソーシャルメディアのチームが ...
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