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広報担当者のための企画書のつくり方入門

災害発生時における広報活動 事業継続計画(BCP)と広報部門の役割

片岡英彦氏(東京片岡英彦事務所)

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

非常時における広報活動

災害は突然かつ予測不能に私たちの世界に襲いかかるものだ。企業にとっては、単なる業務の中断を超えた課題を突きつけられることにもなる。ステークホルダーとの関係に深刻な影響を及ぼす可能性があるからだ。非常時における企業の広報活動は、迅速かつ適切な情報提供によって混乱を最小限に抑え、長期的な視点でステークホルダーとの信頼を構築し、企業としての責任と対応を明確に示す必要がある。私は国際NGO「世界の医療団」で広報責任者として3年半勤務し、東日本大震災をはじめとする災害状況で広報の重要性を実感してきた。今回は、災害発生時における広報活動について、特に事業継続計画(BCP)と広報活動の連携に焦点を当てる。災害時の広報活動が企業にとってどれほど重要であり、どのように効果的に行うべきかを明らかにしたい。

視点1
災害とBCPの関連性

BCPの一環としての災害時広報

突然企業に襲いかかる災害は、業務の中断、人的・物的資源の損失、ステークホルダーとの関係への影響などを引き起こす。BCPは、こうした災害に対応し、事業の中断を最小限に抑え、迅速な回復を目指すための計画のことである。災害発生時におけるBCPの適用は、企業の危機からの素早い復旧能力を高め、危機管理能力を示す重要な手段となる。

災害発生時における広報活動は、BCPの一環であり、重要な位置を占める。広報部門は、災害の状況、企業の対応策、復旧プロセスに関する正確かつタイムリーな情報を提供することで、外部の不安を軽減し、企業の信頼を維持することができる。BCPの策定と実行において、広報の役割は非常に重要で、いざ危機が発生した際に社内外のステークホルダーへの迅速で正確な情報提供を保障することを意味する。このため、事前の準備では、危機発生時にどのように情報を伝え、公衆とコミュニケーションを取るかの計画を立てる必要がある。そして、危機発生時の対応においては、計画に従って情報を配信し、適切に反応しなければならない。

    ここに注目

    BCPが注目される背景と広報の新たな課題

    現代においては、ウクライナ問題やパレスチナ問題といった国際紛争や政治的混乱に加えて、国内リスクも無視できない。特に日本では、2024年1月に発生した能登半島地震のような自然災害が企業活動に深刻な影響を与えることも数多い。このような国内外のリスク増大の状況の中で、広報部門はBCPの重要な一翼を担うことになる。

    危機発生時の広報戦略では、従来の対応手法に加えて、デジタルメディアやソーシャルメディアを活用したコミュニケーションの重要性が増している。リアルタイムでの情報共有と双方向のコミュニケーションを可能にすることで、危機対応の効果を高めることが求められる。情報の速報性と透明性が求められる一方で、誤情報の拡散リスクも高まっている。これらの変化と新たな問題への適切な対処は、現代の広報活動における重要な要素の一つである。また、データ分析を用いて、ターゲットオーディエンスの行動や反応を理解し、コミュニケーション戦略をより効果的にすることも重要である。さらに、内部コミュニケーションにも焦点を当て、従業員が一貫した情報を持ち、外部へのメッセージ伝達においても一致した態度を取れるようにする。これらの戦略は、危機対応時における迅速かつ一貫したコミュニケーションで企業の信頼と評判を保護し、強化する上で不可欠である。

災害の種類とBCPへの応用

災害は主に自然災害(地震、台風、洪水など)と人為的災害(火災、テロ、サイバー攻撃など)に分けられる。これらの災害は、企業の物理的インフラ、情報システム、従業員の安全、業務の連続性に直接的な影響を及ぼす。各種災害の特性を理解し、それに応じた対策をBCPに盛り込むことが重要である。

図1 災害の分類と特徴

自然災害

地震:建物やインフラの損傷、アクセスの遮断
台風:強風による物理的損害、洪水のリスク
洪水:設備の浸水、物流・交通の混乱

人為的災害

火災:施設の損害、避難と再開の必要性
テロ:安全への直接的な脅威、業務中断
サイバー攻撃:情報システムの損傷、データ漏洩のリスク

BCPにおけるリスク評価

BCPの策定には、リスク評価が不可欠である。これには、企業が直面する可能性のある災害の特定、それらの発生確率と潜在的な影響の評価が含まれる。リスク評価に基づき、優先順位を設定し、リソースの割り当て、対応計画の策定、復旧戦略の構築を行う。

BCPにおけるリスク評価は、災害直後の緊急対応に加え、中長期的なビジネス継続性や復旧計画も考慮する必要がある。災害の影響は、初期の混乱だけに留まらず、供給網の再構築、従業員の福祉、顧客へのサービス提供の継続など、さまざまな側面で長期にわたって及ぶためだ。…

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