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リスク広報最前線

クレームを商品の改良、称賛につなげる SNSでの問題投稿に対する危機管理

浅見隆行

複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。

問題の経緯

2023年5月11日

公式サイトで公開した「使い込んだフライパンでも綺麗に焼けるギョーザの検証に向けたお願い」。

冷凍餃子をフライパンで焼いたところ張り付いてしまった、と5月11日に消費者がツイート。翌日、味の素冷凍食品の公式アカウントは研究・開発のため、調理に使用したフライパンを着払いで提供してほしい旨、返信。6月16日には、調理検証の結果と、使い込んだフライパンを提供してほしいと呼びかけ、6月19日には1000個以上のフライパンが届いたと報告した(現在は受付終了)。


2023年5月11日に、ある消費者が「油いらないって!!!!書いてたじゃん!!!!!! 嘘つき!!!!!!」と油を使わずに焼いて焦げてしまった冷凍餃子の写真をTwitterに投稿。これに対し、味の素冷凍食品の公式アカウントは、フライパンを着払いで提供してもらえるようにお願いし、研究開発に活用したいことを伝えました。その後の対応も含め見事だったため、クレームから一転して味の素冷凍食品を称賛するツイートが溢れる事態になりました。

今回は、このケースを題材に、SNSでの問題投稿に対する危機管理について説明します。

写真・動画付きでの投稿への対応

TwitterなどSNSが普及するにつれ、消費者が商品・サービスに問題を発見したときに、写真や動画と一緒にSNSに投稿するケースが増えています。異物が混入した商品の写真付き投稿がきっかけで一時販売停止になった例もありました。また消費者・従業員が商品・サービスに関する不適切な投稿をする例も相次いでいます。回転寿司チェーンで醤油さしを舐めた高校生(当時)の動画が投稿され世の中を騒がせたケースなどが記憶に新しいところです。

SNSに投稿された内容は、拡散するスピードが速いこと、SNS利用者一人ひとりが独自のコメントを付けやすいこと、元の投稿が削除されても動画や写真のコピーなどが転載されるなどしてデジタルデータがネット上に存在し続けること、ネットニュースでも面白おかしく取り上げられることなどから、会社が対応を誤ると更なる炎上に繋がりやすい特徴があります。

そうした中、味の素冷凍食品の公式アカウントは、5月11日に焦げてしまった冷凍餃子の写真を投稿した消費者に対し、翌日にフライパンの着払いでの提供をお願いするレスポンスをしました。

炎上する可能性がある投稿に即座に対応したことはもちろんのこと、着払いでの提供のお願いが非常に丁寧で、なおかつ、「弊社は、誰でも失敗なく、羽根つきギョーザが焼き上がる感動をお届けすることを目指しております」「焦げ付いてしまうフライパンの状態を確認させていただき、研究・開発に活用...

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