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リスク広報最前線

PR動画制作におけるリスクと信頼回復に向けたSNS・公式サイトの活用

浅見隆行

複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。

問題の経緯

2023年5月5日

批判の声に対応した記録は、ネット上に一定期間公開しておくと、後になって炎上騒動を知った人たちにも、その対応が伝わり信頼の回復に。目に触れやすい位置に掲載してあるかも確認しておきたい。

©123RF

ファッション誌『LARME』の10周年記念動画が公式Instagramで公開されたが、映像にはシルバニアファミリーとみられる人形が登場し、その家が燃やされている演出があったため、批判が起きた。その後、投稿は削除され、謝罪文が5月5日にInstagramのストーリーズや公式サイトに掲載された。

LARMEは5月、女性ファッション誌の『LARME』10周年記念の動画を公式Instagramで公開しました。しかし、シルバニアファミリーと思われる人形と家を燃やすような演出がされているシーンがあったため、「雑誌媒体なのに他社商品に敬意がない」などと批判され炎上してしまいました。

そこで、今回は、広告やPR動画を制作する際にどこに注意すべきか、また不適切であることを理由に炎上してしまった場合の広報対応について解説します。

演出意図の「分かりにくさ」とリスク

批判された動画は約90秒で構成され、女性ファッション誌『LARME』のInstagram公式アカウントのリールで公開されました。歌舞伎町の路上で何かが燃やされている様子が約2秒間流れ、それを見つめるモデルたちの顔がアップされた後、約4秒間、シルバニアファミリーと思われる人形と家を燃やす映像が流れました。

動画の後半も、モデルたちがランウェイを歩く映像の合間にシルバニアファミリーと思われる人形の顔のアップと、再び何かが燃やされる様子が約2秒間流れました。約90秒のうち約8秒がシルバニアファミリーと思われる家を燃やす演出だったのです。

これに加え、10周年記念との関連性が分かりにくく、動画に込められたメッセージが理解しにくかったこともあり、余計に「なぜシルバニアを燃やす演出が必要だったのか」などの批判が集まりました。

企業が広告やPR動画にメッセージを込めることはよくあります。また、メッセージを込めなくても、注目を集めるために謎めいた演出をすることもよくあります。しかし、メッセージを込めた場合、提供する側は「問題がない」と思っていても、見る側がメッセージに反対意見を抱きやすいリスクがあります。また、謎めいた演出の場合には、見る側が「何が言いたいのだろう」と不満を抱きやすいリスクがあります。

反対意見や不満などでイライラが募っているのに、さらに演出が不適切であれば、火に油を注ぎ、見る側の不平、不満が爆発することになってしまうのです。今回のLARMEのケースは...

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