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実践!プレスリリース道場

ネットメディアを重視、当初予測の3倍売り上げた商品開発リリース

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。

石井食品といえば、チキンハンバーグやミートボールなど、多くの人にとって馴染みの深い企業ではないでしょうか。私も学生時代にはお弁当などでよくお世話になったものです。

その石井食品が2022年に発売したのが、京都で食堂「佰食屋」を運営するminitts(以下、ミニッツ)と共同開発した、常温で製造日より100日間保存できる「イシイの佰にぎり」です。

そもそもの始まりは、同社の代表取締役社長執行役員・石井智康さんと、ミニッツの代表取締役・中村朱美さんが、京都で開催されたハンバーグ選手権に審査員として招かれ、意気投合したことでした。

トップの共感からコラボが実現

佰食屋はステーキ丼を中心としたランチ営業のみ。1日100食完売したら営業終了という経営手法で、ワークライフバランスとフードロスゼロを実現しているユニークな企業です。石井食品も、普段の食事にも利用できる災害時の保存食を活用したローリングストックに熱心に取り組んでいます。

佰食屋が提唱していることのひとつが、日頃から災害に備えて筋力強化をしておくことが重要だという「防災筋力®」という考え方。これに石井さんが共感し、たんぱく質が10g以上摂取できるおにぎりメニューを開発することにしたのです。約1年にわたり共同で試作を繰り返した結果、「ステーキ丼味」「炒飯味」「カレー味」の3種類が完成しました。

普段はリリースが決まってから広報に話が降りてきますが、本件はトップ同士の提案で生まれた企画なので、すぐに顧客体験デザイン部執行役員ブランド戦略チーム兼広報チームマネージャーの池田明子さんにも話がきて、開発段階から関わることになりました。

この商品で最も気になるポイントは、常温で製造日より100日間の保存ができるということ。ただ、池田さんによると「当社ではすでに多数のレトルト商品に活用していた技術だったので、それほど珍しいという感覚はありませんでした。ただ、佰食屋さんのお名前ともリンクすることからダブルミーニングで『100』を前面に打ち出すことにしました」と話します。

では、そのリリースを見ていきましょう。

(ポイント1)まずタイトルを見ると「おにぎりが常温で100日保存可能」「たんぱく質10g以上」という新奇性があり、「佰食屋」という著名性も含め、ニュースバリューのある言葉のオンパレードとなっています。

(ポイント2)掲載したビジュアルの訴求力が大きいことも特徴のひとつ。1枚目のメインカットはおいしそうな感じが伝わってきますし、このおにぎりの特徴である四角形もよく分かります。ちなみに四角形なのは、他者と分け合って食べやすいからで、非常時を意識しています。2枚目には佰食屋のサイトなどと同じ「防災筋力®」の画像を掲載しました。災害時に備えて筋力を高めておこうというメッセージがよく伝わり、インパクトがあります。

(ポイント3)2枚目は、1ページを使って開発背景を丁寧に説明しています。両社が意気投合した共通点のひとつが、社会問題を解決できる商品開発を常に意識していることで、「佰にぎり」は災害時にも活用できるというコンセプトが伝わるようになっています。このコンセプトに共感して記事にするメディアもあるでしょう。コンセプチュアルな商品ほど、「開発背景」はきちんと載せるべきなのです。


「イシイの佰にぎり」開発リリース

3枚目には商品詳細を載せています。この商品は湯煎後...

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