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実践!プレスリリース道場

精力的なリリース配信でウェブのPV数が3倍に

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。

同じ業界の企業で構成する業界団体。業界について世の中に広く啓発する役割が期待されており、プレスリリースは非常に有効な手段ですが、残念ながらリリースを出している団体はあまり見かけません。

今回は先駆け的な事例として、私も何度か広報研修を実施している製薬会社の業界団体、くすりの適正使用協議会のリリースを紹介したいと思います。

同会は1989年発足で、製薬会社23社などが加盟しています。当時は世界の大手製薬会社が薬のリスクを市民に伝える必要性を訴え始めていました。日本でも妊婦が薬を服用したことから起きたサリドマイド被害などがあり、製薬会社が厚生省と相談して同会を設立、薬の正しい知識の普及に努めてきました。

中でも処方箋により薬局で出された薬の成分や効果、副作用などの詳細が分かるウェブサイト「くすりのしおり」(2022年から「くすりのしおりミルシルサイト」に改編)は月間約1000万PVを誇るので、ご覧になったことがある方もいるのではないでしょうか。

同協議会が今、普及に力を入れているのが「バイオ医薬品」です。従来の化学合成による薬と違い、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術を用いて製造したタンパク質を有効成分とする医薬品で、体内に侵入したウイルスや細菌などの機能を阻止する働きがあります。

人の体にはウイルスや細菌から体を守る免疫システムが備わっていますが、それが正常に機能しなくなることで起こる病気を自己免疫疾患といい、関節リウマチや乾癬(かんせん)、炎症性腸疾患などがこれに当たります。これらに有効なのがバイオ医薬品で、まだ高価ではあるものの、化学合成薬では対処できなかった症状などにも効果が表れています。

「2021年に世界で最も売れた医薬品の1・3・4位はバイオ医薬品です。患者本人がそうと知らずに使っている事例も多く、すでに私たちの生活に深くかかわっています」と米沢実理事長付部長。しかしまだ社会的な認知度が低いため、利用者への啓発はもちろん、医師や薬剤師にも活用してもらえるよう、「マンガでわかるバイオ医薬品 自己免疫疾患 治療薬編」を2022年5月に公式サイトに公開し、リリースも配信。2021年6月に公開された「がん治療薬編」に続く第2弾でした。

対象ごとに形式を使いわけ

こうした資材は従来、小冊子などの状態で配布するのが主流でしたが、印刷代や配送費などのコストがかかります。同会ではウェブサイトへのアクセスが好調だったことから、2019年以降はスマホを使いこなす世代に向けた情報は基本的にウェブ版で公開し、高齢者向け資料は紙で配布するなど、対象層ごとに形式を変えて制作するようになりました。

紙版であれば手に取ってもらえますが、ウェブ版は知らないとアクセスしてもらえないので、リリースを配信することが一層必要になります。

リリース制作の実務を担ったのは広報部員の安井舞さん。資材掲載の2カ月ほど前から米沢さんにヒアリングを開始し、広報部長の山崎茂之さんと相談しながらリリースを準備しました。

(ポイント1)まず着目すべきは配信日で、ウェブ公開当日にしています。公開前に配信してしまうと、リリースを目にした人がアクセスしてもまだ見ることができないからです。これは発売前に配信するテレビや新聞、雑誌などの既存メディア向けリリースと決定的に違う点で、基本的な注意事項です。

マンガでわかるバイオ医薬品シリーズ 第2弾公開リリース

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