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企業アカウントは注目をどう活かす?

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

企業アカウントは注目をどう活かす?
W杯会場で「上司に、2週間の休暇をありがとう」と掲げた男性写真の拡散を受け、NTT東日本公式Twitterが「楽しんで」と所属企業を匂わせたツイートを投稿した。

FIFAワールドカップ公式Twitterが2022年11月に投稿した写真が大きな注目を集めた。日本人男性が「上司に、2週間の休暇をありがとう」と英語で書かれた紙を持ったものだった。この投稿をNTT東日本公式Twitterが引用する形で「休暇とW杯を楽しんでください。あなたの上司より」と英語でツイート。本記事の執筆時点(2022年12月5日)で2万以上のリツイートと6万以上のいいねが付いている。反応も多くはポジティブな声だ。

のちの報道によると、NTT東日本は写真の男性が同社社員であることを認めた。結果的には投稿は、企業風土などを示すたいへん良い広報になったと考えられる。ここで考えてみたいのは、その裏側の判断だ。企業アカウントの運用を多く見てきた経験から言えば、大企業公式アカウントで今回のように自社に関係する話題が注目された時に、当意即妙の反応をするというのは、決して容易なことではないからだ。

滅多にない「注目」だが⋯

社員が上司に向けて世界的なイベント会場からメッセージを送る様子が注目される⋯。おそらくそんなことは誰も予想していなかっただろう。そして同じ形で「注目」されることは二度とないかもしれない。しかし広報担当者なら、「注目」それ自体が大きな価値を持ち、それをどう活かすかが組織への理解や支持を増やすためにとても重要な機会だと理解してもらえるのではないだろうか。

問題は、今回のように「注目」が集まった時に、「これは反応すべき機会」と判断し、素早く具体的な反応の形を組織的に決定・投稿できるだろうかということだ。そこでは、反応のメリット・デメリットや契約・権利・コンプライアンス、レピュテーション、炎上リスクなど、様々な観点での確認を「注目」が失われる前にする必要がある。これはつまり、どんな形で起きるか分からない突然の「注目」機会は、少なくとも準備していなければ活かせないということなのだ。

反応を判断するフロー検討を

SNSは、完全に1人でスマホ運用する組織から、複数部署の確認を経て投稿する組織まで体制には大きな差があるが、どちらもやるべき準備は2つだ。ひとつは起案から投稿までのリードタイムを日ごろから短くしておくこと。ある有名企業は起案者以外の担当部署の1人が確認すれば投稿OKとし、それを可能にするため日々共通理解を増やす工夫を重ねているという。

2つ目は、「注目」のようなイレギュラーな場面での確認フローを決めておくことだ。チェックリストで迅速に対応をするものしないものを決定できるようにする。少しでもその機会を活かす具体的な方法を決めるために時間を使いたい。日ごろから大切にしているメッセージを広く伝えるために「注目」は貴重だ。それを活かせないことは、機会損失を呼ぶリスクだと認識したい。

社会構想大学院大学 客員教授 ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会構想大学院大学客員教授。日本広報学会 常任理事。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net/

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