ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。
情報発信から新たな対応を要する思わぬ展開をもたらすことがある。最近の出来事を参考に、今時の情報発信リスクについて考えてみたい。
過去の調査レポートに注目
6月、政府が企業などに節電を呼びかける中、2011年に野村総研がまとめた「家庭における節電対策の推進」という調査レポートがネット上で注目を集めた。2011年3月の原発事故後に政府が節電対策を検討する中で出されたものだった。調査には、使用するエアコン台数を減らすよりも、テレビをこまめに消す方が1.7倍の節電効果があることなどが書かれてあり、ネットで改めて話題になった。
野村総研は「話題になっているのは11年前のレポート」で「当時と今では家電の性能が大きく異なる」ことや「電力の使用状況も当時のものなので参考程度にとどめてほしい」といったコメントを出して注意を呼びかけた。
反響の対応ができない
6月下旬、ドミノ・ピザは「デリバリーでLサイズピザを買うとMサイズピザが2枚無料」というキャンペーンを実施。報道によると、普段注文しない味を試してもらう狙いで開始したが、最も安いLサイズピザを選ぶと非常に安く買える「裏技」がネット上で拡散し、注文が殺到。一部の店舗で商品オーダー受付を停止するという事態が続いた。メディアは店舗の混乱を報じ、同社は「慎重に売上予測を立て、それに合わせて計画と準備を進めています」が「予想をはるかに上回る反響をいただきました」とコメントした。
文春オンラインは、キャンペーンの事前通達が不十分で、配達の人員や食材の確保もできていなかったという声を紹介。社内SNSに全国の従業員から窮状を訴える書き込みが集まったと書いた。また「社内広報担当者」が「その表現がここで発するメッセージとして適切なのか?掲載前に今一度考えてみてください」などと注意を促す投稿を画面キャプチャで掲載している。
社長が企画を勝手に進める
7月、一人焼肉専門店の焼肉ライク社長が、Twitter上でジムに通う人向けの定額制プランを提案し、感想や希望を返信で募る形でやりとりを進めた結果、わずか1日のうちに大量の反応が集まった。1日の終わりに社長は「すいません、想定以上の反響で返信等できていません。色々意見ありがとうございます。(中略)僕は関係各所から勝手に企画を進めて怒られてます汗」と投稿。その後、新メニューのリリース予定を伝えた。
情報発信はもともと反響を求めるものであり、どれだけ想定してもそのタイミングや形、影響には想像を超えるものがある。広報部門としては、具体的なリスクの検討はもちろんのこと、アンテナを立て何が起きても素早く対応できるようにしておきたい。
社会構想大学院大学 客員教授 ビーンスター 代表取締役社会構想大学院大学客員教授。日本広報学会 常任理事。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net/ |