社史や理念、事業の意義を見直す機会となる周年をどのように迎えるか。長寿企業から学びます。


社内のデザイン部門のモチベーションアップにつながった記念ロゴは、記念サイトや社史、封筒やクリアファイルなどにも活用された。
2021年10月、ジャノメは創業100周年を迎え、同じタイミングで「蛇の目ミシン工業」から商号を変更し、新たな一歩を踏み出した。
周年事業のテーマは、「お客さま・取引先・株主・社員に感謝の気持ちを伝えること」。周年のためのコピーは特に設けていなかったが、記念サイトに掲げた「“つくる”を楽しく、“つくるを支える”をもっと」が自然と浸透し、結果的に100周年のキャッチフレーズになったという。
デザイン部門も活性化
ミシンのシルエットと100の数字を組み合わせた記念ロゴは、社内のデザイン部門によるもの。そのアイデアは、新聞の全面広告にも活かされ、日本経済新聞に掲載した広告は「第43回 2022日本BtoB広告賞」新聞広告の部で銀賞を受賞。この新聞広告は社内外から大きな反響があったという。
「デザインが話題になったことで、これまで製品デザインが中心だったデザイン部門のモチベーションが高まり、封筒やクリアファイルも新たに制作しました。ブランドのトータルデザインができたことも100周年の意義だと思います」と管理本部総務部長の福島武雄氏。
100周年を機に、初めての試みも実施。それが記念サイトのトップを飾るイラストのキービジュアルと、YouTubeなどで展開した企業紹介動画の制作だ。
「『今のジャノメを伝えたい』という思いのもと、性別や年齢、国籍を超えて多くの人が使う姿や、産業機器の現場などを、初めてイラストで描いてもらいました。また、対外的な会社紹介動画も当社にとって初の試みでしたが、再生回数が3カ月で16万回を超え、半数近くが最後まで観てくださるなど、想像を超える視聴率となりました」と同担当部長の仲野有美子氏は手応えを語る。
また、ユーザーに向けた創業100周年の記念企画として、15㎝四方のミニタペストリーを募集する「ヌイツナゲヨウ」と、ミシンにまつわるエピソードを募る「ミシンとわたし」を実施。同社のミシンを愛用する消費者から、多くの作品が寄せられた。
「『ミシンとわたし』を担当した部署のメンバーは、届いたエピソードを読んで泣いてしまった...