社史や理念、事業の意義を見直す機会となる周年をどのように迎えるか。長寿企業から学びます。

「はたらくひと見学」(写真左)では、参加者から「世界に誇る活動」という声もあがった。式典の出席者には、工場の廃材を活用した「アップサイクル コサージュ」が配布された(写真右)。

自社で開催した記念式典の様子。
1972年に日本で初めての福祉工場として設立されたオムロン太陽が、2022年4月8日に創立50周年を迎えた。
電子部品を生産する同社では、社員個々人のハンディキャップに適応した配置や製造現場の工程の自動化や治具を使った工程改善など、人が装置に合わせるのではなく、働く人の能力を引き出すために装置側を改善する「人の可能性を引き出す」現場づくりにこだわってきた。これまで現場から生まれた改善提案の件数は、2011年度からの10年間で1361件にものぼる。
周年プロジェクトの開始当初は大きな会場での記念式典を想定していたが、企画アドバイザーを務めたアートプロデューサー栗栖良依氏の一言をきっかけに方向転換を決める。
現場の可能性を解き放つ
「『オムロン太陽の現場にはすでに未来があるんです。ぜひそれを日本全国に解き放ってください!』という言葉で、工場を会場とすることに決めました。自分たちにとっては当たり前だった働き方そのものに、価値があることを気づかせてもらいました」と話すのは、代表取締役社長の立石郁雄氏。
そこから導き出された周年事業の目的は、時代を切り拓いてきた自社の歴史を共生社会に向けたメッセージとして発信し、すべての人々がWell-Beingを感じられる社会を創造すること。事業の主語を「自社」ではなく「社会」とし、「UNLOCK THE FUTURE ~未来へ拓け~」をコンセプトに掲げた。
コロナ禍での多忙な業務とも重なり、なかなか進められずいたなかで2022年1月に立石氏が社長に就任。プロジェクトマネージャーとして、メンバーの負担が増えないよう自主的に参加したい人を募り、本社の広報や技術部門も含めた全社横断型のプロジェクトに昇格した。
「モチベーションの高い人たちが入ったことで、チームが活性化し、ものすごい速さで進んでいきました。そこには...