「〇〇してください」「〇〇禁止」。そう呼び掛けても、人はなかなか行動を変えてくれない。それはなぜか。行動科学のインサイトを使って広報実務を点検します。
無理強いするより、自らそうしたくなるように後押しする。ナッジを活用するフレームワークとして、英国の行動インサイトチームが提案する「EAST」を前回紹介しました*1。ナッジのエッセンスを「Easy(簡単に)」「Attractive(魅力的に)」「Social(社会的に)」「Timely(タイミングよく)」の4つにまとめたものです。
*1 Service, O., Hallsworth, M., Halpern, D., Algate, F., Gallagher, R., Nguyen, S., Ruda, S. & Sanders, M.(2014). EAST. Four simple ways to apply behavioural insights. https://www.bi.team/wp-content/uploads/2015/07/BIT-Publication-EAST_FA_WEB.pdf(参照 2022-4-7)
受診率向上に成功
厚生労働省が作成した『受診率向上施策ハンドブック』はナッジを用いた受診勧奨施策をEASTに従ってまとめています*2。今回は「Social」と「Timely」の事例を紹介します。
*2 厚生労働省「受診率向上施策ハンドブック 明日から使えるナッジ理論」. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000506623.pdf(参照 2022-4-7)
まず「Social」。世間の目を気にしたり、知らず知らずのうちに周囲の行動や発言から影響を受けたりと、人間は社会的な動物です。この「周りの人から影響を受ける」という人間の社会的な性質を利用して、受診率を向上させることができます。
高知市は、「過去10年間で〇〇市(メッセージの受け手が住んでいる地域名)の受診率が1.3倍に増加しました」という勧奨メッセージを開発。「周りも受診しているようだから...