日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

広報のための行動インサイト

無理強いせず後押し、ナッジを実務に活かす

山田 歩(滋賀県立大学)

「〇〇してください」「〇〇禁止」。そう呼び掛けても、人はなかなか行動を変えてくれない。それはなぜか。行動科学のインサイトを使って広報実務を点検します。

イソップ寓話の『北風と太陽』。北風と太陽が旅人の外套を脱がそうと勝負します。北風が外套を吹き飛ばそうとしても、旅人からは抵抗されるばかり。続いて、太陽が照らしつけると旅人は自ら外套を脱ぎ、太陽が勝利する。「無理強いするより、自らそうしたくなるように後押しする」。ナッジなどの行動インサイトに基づいた行動介入の基本的考え方を表す物語です。

ナッジを実務に活かすには

とはいえ、この寓話のように「後押しするのが人を動かすコツですよ」と言われても、実際にどうナッジを設計したら良いのかいまいち分からない。これが実務家の素直な声であるように思います。何しろ行動科学の知見は膨大かつ複雑です。理論的な精緻さだけでなく、実務に耐えうる使い勝手の良さがほしいところです。こうしたニーズを受け、ナッジを活用するフレームワークが様々な組織から提案されています。

もっとも代表的なのが、英国の行動インサイトチームが開発した「EAST」です*1。このフレームワークではナッジのエッセンスを「Easy(簡単に)」「Attractive(魅力的に)」「Social(社会的に)」「Timely(タイミングよく)」の4つにまとめています。ナッジの基本的な切り口を整理したものと考えればよいでしょう。

あと69%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

広報のための行動インサイト の記事一覧

無理強いせず後押し、ナッジを実務に活かす(この記事です)
政策は現実離れしていないか? 行動インサイトとEBPM
「理由」が人を動かす!? 心理学実験に見る心の動き
取扱注意!「共感」で副作用を引き起こしていないか?
「モノで釣る」呼び掛けにはご注意を──報酬の副作用
勘違いで逆回答──回答形式は正しく設計されているか
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する