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広報のための行動インサイト

取扱注意!「共感」で副作用を引き起こしていないか?

山田 歩(滋賀県立大学)

巧みで効果的な広報テクニック。「巧報」や「効報」の実践に落とし穴はないか。行動科学のインサイトを使って広報実務を点検します。

頭ではなく心に働きかけろ。人間の理性には限界があるようで、コトの重大さを頭で分かってもらっても、行動に移してもらえないことがあります。「心を動かす」コミュニケーションのひとつとして「共感」を狙った働きかけがあります。

例えば、食糧支援を呼び掛けるとき、数百万人の子どもたちが貧困に苦しんでいることを説明するよりも、貧困家庭の一人の子どもにフォーカスし、その痛ましい写真を見せたほうが、反響を得ることができます*1。貧困問題を抽象的に理解するだけでは感情のスイッチが入らないけれども、貧困に苦しむ一人の子どものパーソナルなストーリーであれば感情移入しやすいということでしょう。

*1 Small, D., Loewenstein, G., & Slovic, P.(2007). Sympathy and callousness:The impact of deliberative thought on donations to identifiable and statistical victims. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 102, 143-153.

しかしながら近年、このような「感情を揺さぶる」という意味での共感に頼るコミュニケーションに対しては、懸念の声も聞かれます。例えば、ソマリアでテロリストの社会復帰などの人道支援を続ける永井陽右氏は、テロ被害者への支援と比べて、元テロリストへの支援は関心がもたれにくいと語ります*2

*2 永井陽右(2021). 共感という病 かんき出版

テロリストよりもテロ被害者。貧困男性より貧困女子。黒い成犬より白い幼犬。同程度に支援や保護をうけるべき事情を抱えていたとしても、「分かりやすい問題」や「かわいい対象」に...

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