「〇〇してください」「〇〇禁止」。そう呼び掛けても、人はなかなか行動を変えてくれない。それはなぜか。行動科学のインサイトを使って広報実務を点検します。
「今年度受診しないと、来年度、検査キットを送れません」と損失を強調したメッセージに変更したら、がん検診の受診率がアップ*1。「他の宿泊者も協力しています」と同調性を刺激するメッセージにしたら、宿泊者のタオル再利用率が向上*2。損失回避傾向や同調性といった心理学研究から得られた行動インサイトを活かして、行動のボトルネックを解消する取組みが広がりつつあります。
とはいえ、行動環境を厳密にコントロールした心理学実験と異なり、現実はコントロールしきれない要素が複雑に絡み合います。現実の人間の行動は想像を超えてきます。政策の現場ではどんな働きかけを使ったらよいのかハッキリしないことが多いでしょう。
その場合、決め打ちではなく、エビデンスを取りながら、方向性を絞りこんでいくことが重要となります。2020年7月のレジ袋有料化に合わせて実施された環境省のレジ袋削減キャンペーンを例にそのプロセスを追いかけましょう。
エビデンスで方向性を絞る
このキャンペーンでは、マイバッグの利用促進にどのような働きかけが...
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