「〇〇してください」「〇〇禁止」。そう呼び掛けても、人はなかなか行動を変えてくれない。それはなぜか。行動科学のインサイトを使って広報実務を点検します。
2021年は政治リーダーの「説明力」の乏しさがそこかしこで露呈した年でした。東京2020大会開催をめぐっては、菅政権はコロナ対策で医療逼迫を招きながら「安全安心」を繰り返すばかりで、世論の反発を受けました。秋に発足した岸田政権では、目玉政策である10万円の個人給付をめぐり方針が二転三転。困窮者対策なのか、子育て支援か、消費喚起策か。給付の目的が曖昧なために議論は錯綜。混乱と困惑が広がりました。
「理由」が人を動かす
コミュニケーションにおいて目的や理由を説明することの重要性は強調しすぎることはありません。ときに人間は政策の「内容」以上に「理由」を求めます。理由の「人を動かす」力を検証した心理学実験を紹介しましょう*1。この実験では米国の学生に下記のシナリオを読ませ3択を求めました。
シナリオA
あなたは難しい資格試験をちょうど受け終えたところだ。秋学期の終わりで、もうヘトヘト。(A1)試験に合格したかは分からない。もし不合格ならクリスマス休暇のあと数か月以内に再試験を...
あと60%