広報活動には、様々なメディアが積極的に活用されています。メディア史の観点から考察すると、どのような期待のもと、メディア利用がなされているのか、その本質が見えてきます。
連載当初から1年半の間に浮上した、メディアに関連する最大のトピックといえば、「メタバース」でしょう。連載第1回では、コロナ禍における「あつまれ どうぶつの森」の人気に焦点をあて、第16回でもメタバースに言及しました。
技術の進化を上回る期待値
2021年、Facebookが社名をMeta Platformsに変更して以降、経済誌などでは相次いで、暗号資産やNFTなどと抱き合わせでメタバースが特集されています。筆者のところにもたびたび、新聞社や放送局からメタバースに関する取材依頼が来るようになりました。
現在、「あつ森」や「フォートナイト」に代表されるゲーミング・プラットフォーム、ClusterやVRChatに代表されるソーシャルVRプラットフォームなどが林立していて、コロナ禍が追い風になって利用者が急増しているのは確かです。
もっとも、技術の発展は一朝一夕ではなく、VR(仮想現実)もAR(拡張現実)も2010年代を通じて、着実に進化を遂げてきました。その成果が顕著にあらわれたのが2016年です。Oculus Riftなどの比較的安価なVRヘッドセットが登場した一方、ARゲーム「ポケモンGO」が社会現象にもなったことで、「VR元年」とも「AR元年」とも呼ばれました。メタバースをめぐるここ数カ月の過熱報道によって、技術やサービスの進化よりも、社会の期待値のほうが一気に跳ね上がってしまったようにみえます。
「あつ森」を擁する任天堂の古川俊太郎社長は2月3日、メタバースに関する質問を受け...