広報活動には、様々なメディアが積極的に活用されています。メディア史の観点から考察すると、どのような期待のもと、メディア利用がなされているのか、その本質が見えてきます。
緊急事態宣言が解除されて間もない10月上旬、東京都多摩市のKDDI MUSEUMを訪問しました。2020年12月に一般公開が始まったばかりの、新しくてきれいな企業博物館です。新型コロナ禍での船出となり、緊急事態宣言中は新規予約の受付を停止するなど、来館者数を制限しての運営が続いています。
筆者は現在、放送大学で「メディア論」の授業を担当しているのですが、当日はここで番組のロケを行い、日本の国際通信の歴史に関する貴重な展示物とともに、普段からガイドツアーを担当しているスタッフの方による解説も撮影しました。
バランスのとれた展示構成
海底電信ケーブルが陸揚げされた明治4年の長崎県・小ヶ倉千本海底線陸揚庫(通称「ケーブルハット」)の展示を出発点に、海底通信や無線通信、戦後の衛星通信の歩みに加え、通信の自由化が行われた1985年以降の固定電話や携帯電話、スマートフォンなどの展開、そして5Gやスマートグラスといった先端技術の体験まで、充実した展示構成になっています。放送大学という媒体の特質上、ブランド名を声に出しづらい制約もありましたが、広報担当の方が事前相談から当日の段取りまで親切に対応くださり、順調に撮影できました。
過去にはNTT技術史料館、NHK放送博物館でもロケを行い、メディアの歴史を体験的に学べる博物館として番組内で紹介してきました。特殊会社のNTT、特殊法人のNHKに比べると、KDDIは沿革が複雑なので、どのように展示を構成するのか──言い換えれば、展示物にどのようなストーリーを語らせるのか...