広報活動には、様々なメディアが積極的に活用されています。メディア史の観点から考察すると、どのような期待のもと、メディア利用がなされているのか、その本質が見えてきます。
2020年の春、電子情報通信学会が刊行する季刊誌『通信ソサイエティマガジン B-plus』に「SNSをめぐるメディア論的思考──常時接続社会におけるマスメディアとの共振作用」という論文を書きました*1。
「マスメディアとの共振作用」とは、炎上はインターネットの中だけで完結している現象ではなく、新聞やテレビの報道によって深刻な大炎上をもたらし、社会問題として認知されること、そしてマスメディアで報道されたという既成事実と併せて、さらにネットで再燃していくという悪循環を意味しています。情報番組のキャスターやコメンテーターの発言が、テレビ視聴者のみならず、ネット利用者の感情と同調し、ネットニュースなどで拡散されることは珍しくありません。
SNSを通じて社会問題化
2019年のはじめ、外食チェーンやコンビニなどの従業員による「不適切動画」をめぐる報道がエスカレートしていたことを、この論文を書いたときは念頭に置いていました。ただし、必ずしも悪循環を生むばかりではなく、最近ではフードデリバリー配達員による不適切な行為について、被害を受けた利用者がSNSを通じて告発し、同情や共感の輪が広がった結果、マスメディアが社会問題化するといった事例も相次いでいます。
火消しにあたる危機管理広報についても、マスメディアと...
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