メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は文教大学の井徳正吾ゼミです。
DATA | |
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設立 | 2011年 |
学生数 | 3年生5人、4年生7人 |
OB/OGの主な就職先 | ネット広告会社、ウェブデザイン会社、マーケティング・コンサルティング会社、マーケティング・リサーチ会社、メーカーの広報・宣伝部。主な会社にサニーサイドアップ、マイナビ、日本アイ・ビー・エムなど。 |
文教大学 情報学部 メディア表現学科は、「放送・映像」「出版・ジャーナリズム」「広告・広報・SP」という3分野で、メディアコンテンツ、コミュニケーションを学ぶ。職業イメージに直結した3分野で、興味の方向性を定められるのが特徴だ。
目指すは250分の3!
元博報堂で企業・団体のマーケティング、プランニングにかかわってきた井徳正吾教授のゼミ室では、“実学”をテーマに、企業の課題解決に向けたコミュニケーション設計を行う。
企業からの課題は、神奈川経済同友会が行っている「チャレンジ・プログラム」にエントリーすることで得る。
4月に企業オリエンテーションを受けテーマを得て、気になった課題に対し2~4チームに分かれ、解決の糸口を探していく。その後、10月に第一次予選を経て、11月頭に企業プレゼン、12月に表彰式という流れだ。
「毎年約250チームのエントリーがあります。その中で私たちのゼミが目指すのは最優秀賞の先。全体で最も優れた3チームにしかできない、表彰式での模範プレゼンです。井徳ゼミでは参加した8年間で4チームが選ばれています。県の企業からは注目度の高い表彰式です。その常連となることで、企業からの認知度も上がり、信頼いただけるようにもなってきました」。
課題解決に全力をかける
しかしその分、ゼミ活動は厳しさを増す。10月の第一次予選のプレゼンに間に合わせるために、ゼミ生は8月、9月の夏季休暇期間も作業。バイトや遊びも制限してプレゼンの準備に取り組む。「もちろん学生によっては厳しすぎると敬遠する人もたくさんいます。しかし、大学は社会に出る前のステップであると分かってほしい。大変な分、就職時には自分の武器となるエピソードやアピールできるものが確実に身についているはずです」。
その確かな成果が感じられるエピソードがある。調剤併設型ドラッグストアチェーンを展開する「ウエルシア薬局」の役員以下に対しプレゼンをした際、今までの人事に特別枠として販促専門の本社スタッフの枠をつくり、プレゼンした学生を採りたいと打診があったという。
「最初は『地域のカウンセラー』というコンセプトで学生から提案がありましたが、それはきっと20年前から同社が取り組んでいるテーマ。再考するよう伝え、必死にグループで議論する中で“地域貢献”から広げ『防災』をコンセプトにすることとなりました。企業は漠然としたテーマ(課題)を投げかけるのが普通です。課題の元凶まで紐解き、新たな視点から解決までのプランを提示する。そこを妥協なしでするのが井徳ゼミの特徴です。実際、学生たちも、ただプランを提示するだけでなく、防災関連の識者取材や消費者調査なども行ったうえで、防災グッズや広告ビジュアル、冊子、防災イベントのプログラムなど、アウトプットイメージまで完璧に完成させて提示しました。この網羅性が評価されたのだと思います」。
厳しい指導のもと、短期間で確実にマーケティング、プランニングの基礎から応用までを身につける。ゼミでの濃密な1年間が、社会に出るまでのステップを後押ししている。
課程が7割、アイデアはそこからいくらでも広がる
井徳正吾教授は、元々博報堂で企業へのマーケティング戦略の提案を長年行ってきた。2006年から非常勤講師として教鞭を執ることで、そのノウハウを次世代に教え、一緒に考える楽しさを感じたという。
「企画は“アイデア”が3割。その前の課題設定こそが重要なのです。市場リサーチや問題点の分析、そこから見えてくるチャンスはどこにあるのか、をしっかりと見極めた、ベースを持っておくことで、その先のアイデアの切り口はいくらでも考えられます。学生たちにもそのベースの重要性を知ってもらいたい」と井徳氏。
最近はキャンパスのある茅ヶ崎市の活性化にも力を入れる。「地域の協力あってこその大学です。地元への還元に少しでも貢献できれば」と意気込みを語った。
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