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メディア研究室訪問

広報ツール作成を通じて 地元・春日井に根差した活動

中部大学 人文学部 コミュニケーション学科 柳谷啓子 ゼミ

メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は中部大学の柳谷啓子ゼミです。

柳谷啓子ゼミ室のメンバー。

DATA
設立 2003年
学生数 3年生10人、4年生10人
OB/OGの主な就職先 USEN-NEXT HOLDINGS、グリーンシティケーブルテレビ、中広、メディアドゥ、名古屋東通企画、名鉄観光サービス、マイナビ、メディアハウスホールディングス、シンクスデザイニングプロ、クリーク・アンド・リバー社

中部大学は愛知県春日井市に1964年に設置された私立大学である。人文学部コミュニケーション学科では、学生に地域社会、特に地元春日井市への貢献を通して、メディアと社会のかかわり、また取材・調査を通した地域の情報収集・整理・提供の方法を教えている。

情報をデザインする力

同学科、柳谷啓子教授のゼミでは、大学広報、また春日井市への貢献活動を中心に行っている。広報誌やPR動画の作成などを通し、情報処理能力はもちろん、どのメディアで、どんなコンテンツで発信するのが効果的か、情報デザインを身につけることを目標としている。

「情報の受け手としてのメディアリテラシーを持ってもらうこと。また発信する側として、世の中に与える影響や価値、またときには怖さを感じてもらいたい。SNSなど個人が発信する時代の現代において、学生たちが身につけるべき能力です」と柳谷教授はゼミの教育方針を語る。

まちの情報を残す価値

活動のひとつとして、Wikipedia上の「春日井市」のページを充実させ、全世界に魅力を発信する活動を行っている。世界中で行われている「ウィキペディアタウン」という活動で、春季休暇などを利用し、地元住民に呼びかけ、地域の歴史的建造物、伝統芸能などの写真・動画などを採録し、ページを作成していく。

2019年は市指定文化財である「尻冷やし地蔵」や県指定の無形民俗文化財である「小木田の棒の手」を調査。情報は図書館などの協力を得て収集し、学生が地元住民と一緒に記事を執筆し、写真などと共に投稿した。こうした活動を通して書物からの情報収集、記事の書き方、出典の出し方、写真の撮り方、ウェブページの編集の仕方など、様々なスキルを複合的に学んでいる。

「東日本大震災のとき、写真なども消滅し以前の街並みがデータとして残っていないことが問題視されました。世界への広報はもちろん、この活動が未来に残す価値を学生たちには感じてほしいです」。

「ウィキペディアタウン」は地元住民も参加して行われる。

市の広報と共同し制作

市の広報誌『広報春日井』に記事が掲載されたことも。市出身の漫画家にフォーカスした企画や学生おすすめの勉強スポットを紹介する企画など、市職員のアドバイスを受けながら学生ならではの視点で発信する切り口は、好評を得ている。

2020年はほかにも、JR春日井駅にあるデジタルサイネージに流すPR動画の制作、隣の小牧市の小牧こども未来館の演出、イベントの告知ポスターやSNS開設など、様々な形で地域への貢献、広報活動を行っている。ゼミ生はそれぞれプロジェクトごとに分かれ、1年をかけて複数の企画をこなしていく。

「とても行動力があるゼミ生が多いです。市の職員や地元の高齢者など外部の様々な年代、立場の人と触れ合う機会が多いゼミでもあります。広報ツールの制作はコミュニケーションの中で生まれるもの。これからも積極性を持ってプロジェクトに取り組んでもらえればと思います」。

春日井市と連携し作成した広報ツール。(上から)デジタルサイネージ用PR動画、広報誌『広報春日井』。

文化による言葉のちがいに面白さ 言語と社会のかかわりを分析

柳谷啓子教授の専門は社会言語学である。興味を持ったきっかけは幼少期を過ごした英国での体験にあるという。「“虹”というひとつの言葉であっても日本では7色なのに対し、欧米圏では6色が普通です。言葉によって世界が切り分けられている。言語の枠組みが、世界の認知の仕方に与える影響に興味を持ちました」。

大学教員となり、研究だけではない“教える楽しさ”も芽生えたという。「今コロナ禍で、より情報は複雑化してきています。特に地方の大学はその地域と助け合わなければやっていけない時代です。学生たちが社会の役に立ち、活躍できるようにどうやって導いていけるのか。模索していきたい」と話した。

柳谷啓子(やなぎや・けいこ)教授
慶應義塾大学大学院 文学研究科博士課程単位取得満期退学。慶應義塾大学などを経て、2003年度から中部大学。専門は社会言語学・英語学。共著に『〈はかる〉科学:計・測・量・謀』、共訳書に『スコールズの文学講義』『エーコの読みと深読み』など。

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