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記者の行動原理を読む広報術

「差別用語を使わない」だけでは不十分! 元記者が語る炎上の避け方

松林 薫(ジャーナリスト 社会情報大学院大学 客員教授)

不適切な発言をしてしまったせいで身を滅ぼした例は後を絶たない。さらに、SNSなどを通じ、一度に多くの人に言葉が届けられる今、より一層、炎上リスクは高まる。しかし、なぜ炎上は起きるのだろうか。

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗氏が会長職を辞任した。「女性が多い会議は時間がかかる」といった趣旨の発言が女性差別ではないかと、国際的な非難を浴びたためだ。最近はこうした不用意な発言が大問題に発展するケースが多い。SDGsにジェンダー平等や社会的包摂が盛り込まれたように、差別や不平等に対する意識が世界的に高まっているのだ。広報としても、リスク管理やブランド維持の観点から対応が求められている。

褒め言葉が時として不適切に

SNSが登場する前から不特定多数に情報発信してきたマスコミにとって、これは“古くて新しい”問題だ。研修などを通じて人権問題について学んだり、表現を自己規制したりしてきた歴史がある。

試しに「用字・用語辞典」をひも解いてみよう。記者が原稿を書く際、表記を統一するために使う冊子で、新聞社や通信社が発行している。一般書店で手に入るので、広報部でもどれか1冊、備えておくといいだろう。

この手の用語集には、必ず「差別語・不快用語」の一覧がある。初めて読んだ人は、意外な言葉まで使用不可や要注意に指定されていて驚くはずだ。

例えば職業や肩書きを示す際、「八百屋」や「パン屋」のように「○○屋」と書くのは避けることになっている。筆者自身はこうした呼び方に侮蔑的なニュアンスは全く感じないし、当事者が誇りを持って名乗っていることもある。しかし、相手を罵倒する際に「この○○屋め!」などと言うケースがあるので、誤解を避けるということだろう。なお、「八百屋さん」のように「さん」付けで使ったり、店舗の意味で「街角のパン屋」と書いたりする分には問題ないとされる。

ジェンダー関連では「才媛」や「才色兼備」などが、褒め言葉であっても「女性をことさらに強調、特別扱いする不適切表現」とされている。

こうした表現規制は、SNSの普及とともに一般社会にも広がっている。「言葉狩りだ」「表現の多様性を奪う」といった批判もあるが、様々な背景を持つ人に向けて発信する場合、配慮が必要なことは間違いない。

“無関心”が炎上につながる

ただし、「NGワード集」を作って原稿を事前チェックすれば問題が解決するかといえば、そう単純な話ではない。実は、記者が使うワープロには校正機能が付いていて、クリックひとつでこうした言葉に警告を発してもらえる。それでも問題は起きているのだ。

なぜか。第一に...

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