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ウェブリスク24時

SNS上の誹謗中傷への組織的声明

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

SNS上の誹謗中傷への組織的声明
2020年9月、アミューズは、「当社所属アーティストや関係者への誹謗中傷、デマ情報、憶測記事、なりすまし等について」と題する声明を発表し、ネット上で注目を集めた。

社員などが関係する誹謗中傷に広報部門としてどう対応するか。これが今回のテーマだ。

アミューズはマスコミとファンにあてた9月14日付の声明で、所属アーティストや関係者への度を越えた誹謗中傷、デマ情報、憶測記事などがSNSに多く見られるとし、具体例を挙げながら「法的措置を含む対抗策をこれまで以上に毅然と講じる」とした。同社には7月にこの世を去った俳優の三浦春馬さんが所属していた。声明が出された背景には、三浦さんに対する様々な噂や憶測がSNS上に流され続けていることもあるようだ。

ネット業界も声明を発表

5月、フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』出演のプロレスラー木村花さんが、自ら命を絶った。Twitterに書かれていた誹謗中傷などがその後に問題視された。SNS運営事業者団体は、5月に緊急声明を発表。誹謗中傷の投稿を禁止し、違反者の利用停止措置を取るなどとした。

ヤフーやアマゾンジャパンなどが加盟するセーファーインターネット協会は、誹謗中傷ホットラインを開設。設置から2カ月で約500件の相談を受け付けたことを明らかにした。ヤフーはまた、専門チームによるパトロールやAIを利用した不適切投稿検知などでの対策強化を発表している。

加害加担にも注意が必要

組織として対応を迫られるのは、何も自分たちが攻撃対象になる時ばかりではない。Jリーグ・ジュビロ磐田は6月、同チームのサポーターを名乗るアカウントが浦和レッズ関係者に誹謗中傷コメントを投稿していたとして非難の声明を出した。9月には川崎フロンターレでも同様の声明を出している。

組織的な声明を出しているのは、現状タレントなどを抱えるマネジメント会社やスポーツチームが多いが、誹謗中傷は有名人に限らない。新型コロナ感染者やその家族、あるいはそのデマに苦しめられている人たちもいる。2020年9月、知り合いの女子高生になりすまし「襲ってほしい」などとSNSに投稿して、別の男に襲わせた罪などに問われた20代の男に、京都地裁は懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。すでに身近な問題として捉えておくべき段階に来ているのだ。

被害にあった時は、証拠を残し、運営会社に通報し、発信者情報の開示請求をするなどが一般的だ。警察のHPなどに分かりやすく書かれているが、心理的にダメージを受けた本人には荷が重い。弱い立場の個人を守るために組織が果たす役割は大きく、心理的なサポートも重要になる。

冒頭の声明でアミューズは「アーティスト等も生身の人間」であり「当社には、彼ら/彼女らの健康、生活の平穏、そして幸せを守る義務」があるとし、「傷つき、悲しみ、淋しさを感じる人間」として「気持ちを理解し、寄り添う存在でありたい」としている。いざという時、あなたの組織はそれができるだろうか?

社会情報大学院大学 特任教授 ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会情報大学院大学特任教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net/

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