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Zoom、信頼回復のオンライン説明会

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

信頼回復のオンライン説明会
利用者急増の一方でセキュリティの甘さを指摘されていた米ズーム社は、90日の対策強化を掲げ、トップが毎週オンラインで進捗報告と質疑応答を続けた。

ビデオ会議サービス「Zoom」運営のズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ズーム社)は、世界的な在宅勤務の広がりを背景に利用者急増で注目を集めたが、同時に、プライバシー対策や不審者が会議を荒らす「ズーム爆弾」などセキュリティ対応の甘さが問題視されていた。

同社CEOのエリック・ユアン氏は4月、こうした問題について謝罪し、90日間の安全性対策強化を掲げ、「エリックに何でも聞いて(Ask Eric Anything)」という名で進捗報告と質疑応答のウェビナーを毎週開催した。約1時間の構成で、7月頭までに13回実施した。今後も月1回の頻度で続けていくという。

謝罪と信頼回復と言えば、従来は記者会見が一般的だ。しかし今回はロックダウンの最中だった。急増するユーザーも全世界にいる。ウェビナーを選んだのも、自社製品を使える、見せられる良い機会、という合理的な理由もあったと言える。だがリスクもあった。安全対策の説明時にハッキングされれば、信頼は完全に地に落ちるからだ。

注目の「Ask Me Anything」

Ask Me Anything(AMA)は近年、広報活動でどんどん一般的になってきた手法だ。生中継あるいはTwitterなどでリアルタイムに寄せられる質問に主に経営陣が答えるイベントで、社員向けや採用活動、マーケティングなど幅広いテーマで実施されている。どんな質問が飛び出すか分からないため、ある意味で記者会見よりも臨機応変さが求められる一方で、対象者が限定されることも多く、運用方法も様々で、記録を公開しないという選択肢もある。

ズーム社の場合、ウェビナー内容をすべてYouTube上で公開しており、寄せられた質問やコメント、チャット画面もそのまま見られるようになっている。毎回、商品担当や技術担当の幹部などがそれぞれの進捗を説明した後に、CEOが質問に答える形だ。登壇者は、肩書き・名前そして顔出しで発言する。興味深いのは、どの回も動画のユーザー評価でネガティブよりポジティブがはるかに上回っていることだ。

寄せられる質問も、当初はセキュリティへの不安をぶつけるようなものが多かったが、対策の進捗説明を受けて、細かな使い方なども増えている。

社会との関係強化の機会に

セキュリティ問題で、Zoomは利用禁止だという組織はある。最近、急に名前を聞くようになり、どんな会社かもよく分からないという不安も少なからずあったのではないか。そんな中で経営陣が毎週、画面上に大きく顔を出して語るのは、組織に対する印象を少しは変えるきっかけを生んだはずだ。

Zoomのビデオ会議の利用状況は、4月のピーク時で1日あたりの会議参加者が3億人に達したという。5月半ば時点で同社の時価総額は世界7大航空会社の時価総額を足した額を上回り、7月1日時点の時価総額は、4月の1.9倍になっている。市場評価を見れば、セキュリティ問題を経て、広く社会との関係は強化されてきたように見える。

社会情報大学院大学 特任教授 ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会情報大学院大学特任教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net/

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