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建学の精神が浸透する 大学広報ケーススタディ

創立当初から続く神奈川大の理念 それが「教育は人を造るにあり」

神奈川大学

2018年、「ダイバーシティ宣言」にもとづき、多様性を尊重する決意を表明した神奈川大学。一方、1928年の建学当時、創立者も教育の機会均等を願い、大学を興した背景がある。この2つのストーリーに共通する“想い”とは一体⋯⋯。同大の兼子良夫学長に話を聞いた。

兼子良夫学長。2016年に現職。現在2期目を務め、2020年9月より理事長を兼任。

DATA

広報部広報課10人(専任7人・外部スタッフ3人)・プレス対応、ホームページ・SNS運用、学生募集広報、パンフレット制作他すべての業務を少人数で兼務している。

PRの工夫

理念やダイバーシティへの姿勢の浸透の工夫については、「ストーリーと織り交ぜて話すよう意識している」と兼子良夫学長は話す。例えば、受験生や高校の進路指導の先生に給費生制度を解説する際、「実際に給費がなければ進学できなかった学生もいます。そうした事例や、創立者の“想い”も合わせて伝えることで、より心に残るのではないかと思います」。

「質実剛健」「積極進取」「中正堅実」、この3つを建学の精神に据える神奈川大学。兼子良夫学長は、大学で学ぶ「学問」を中学校や高校の「勉強」と比較した上で、「学問の意義・目的は、人類の生存条件・生きづらさの軽減にあります。その答えはひとつとは限らない、もしくはひとつもない可能性さえある。だからこそ学問への誠実さ、真摯に追究する姿勢の重要性が建学の精神には込められています」と説明する。

さらに、この考えの核となるのが、創立者・米田吉盛の「教育は人を造るにあり」という理念だ。同大は1928年、横浜港を中心とした京浜工業地帯で働く勉学意欲のある青年らが通えるように、との創立者の想いがあり夜間部でのスタートとなった。

今でこそ夜間部は廃止されたが、その想いは「給費生制度」に残っている。これは、条件を満たした学生に4年間で最大840万円を支給(返還不要)するという制度。「教育格差があってはならない、そういう伝統的な本学の理念、いわばDNAがこの給費生制度には息づいています」。

人種・人権問題は道半ば

そんな同大で、2018年、とある“宣言”がなされた。「神奈川大学ダイバーシティ宣言」である。趣旨は、世界の恒久平和と人類の幸福に貢献できる市民を育成し、差別や偏見の根源的な解決を目指すことだ。

「ダイバーシティ」は、2015年に国連で採択されたSDGsにも盛り込まれている。なぜ今(2018年)この宣言だったのか...

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