2019年8月から長崎市で広報戦略のアドバイザーを行う筆者。今回は情報誌など既存媒体の見直しをもとに地方都市ならではの媒体活用のポイントを解説する。
「長崎には遊べる場所がない」という嘆きをよく耳にする。東京のような都市と比較すると、地方都市に娯楽施設は少ない。それは否定しようがない事実ではあるが、あえて「本当にそうか?」と疑ってみたい。
長崎港とその先に稲佐山を望む絶好のロケーション。美しい芝生にシートでも敷いてゆっくり過ごす時間は長崎ならではの無料で楽しめる遊び場だ。一方で数十万円かけて歴史ある花街で検番(芸者)さんと遊ぶこともできる。長崎の環境や歴史を尊重しながら考えてみると、無料から数十万円まで都市にはない様々な遊び方を発見することができる。大都市は消費するのにはぴったりだが、遊び方をつくりだすのなら、遊び場が少ない地方都市のほうが合っているのではないか。
若者に選ばれるまちへ
そんなことを考えたのは、新しい情報誌を制作するにあたって事業者を選定するプロポーザルの仕様書をつくったときのことだ。2018年度の市民意識調査によると「長崎市以外に住み替えることを検討中」と回答した人は30代、20代、10代と若くなるにつれて多くなり、「過去に考えたことがある」も含めると10代、20代では半数以上になることが分かっている。
人口減少が進む中、今後もまちの活力や暮らしやすさを維持するため、特に若い世代の人に長崎を選んでもらうため、「若者に選ばれるまちになる」ことを2019年度の施政方針に掲げている。
その若者たちが重視するもののひとつが「遊び場」なのだという。しかし一方で「どんな遊び場が欲しいか」と尋ねると「ラウンドワン」という答えが返ってくるそうだ。分からなくもないが、まち全体がラウンドワンのようなエンタテイメント性を備えていることに気づいてもらいたい。そんな情報誌をつくりたいと、市役所の広報チームと議論した。
「遊び場」のほかに「仕事」「出会い」「住まい」「挑戦できる環境」も若者は重視するという。魅力的な仕事や出会い、住まいや...