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SDGsコミュニケーションから新たな事業が生まれる

ESG投資の視点が生み出す ビジネス機会と共感の発信

光定洋介 (産業能率大学 経営学部 教授)

社会課題から事業の機会やリスクを見直す際に役立つのが、ESGを意識した投資家の視点。統合報告書は、サステナブル事業の方針や進捗を伝えるためのヒントが凝縮している。オウンドメディアや社内報でSDGsを発信する際も参考になる投資家視点とは。

Q1 環境や社会、企業の持続可能性を切り口にしたコミュニケーションは、投資家視点でも重要ですか?

A 企業価値への影響も大きく重要。IR部門と広報部門の連携が必須

社会的課題の解決をビジネスチャンスとできているか」「コロナのようなネガティブなインパクトを抑制する対策を講じているか」。例えばこうしたコミュニケーションは、企業価値への影響が大きく、投資家にとっても重要です。ただし、雑ぱくに語るのではなく、自社にとって何が重要なのかを定義したうえで、その背景も含めて注力していることを伝える姿勢が望まれます。

投資家との対話で新たな視点

自社にとって何が重要項目なのかを認識するにあたっては、ステークホルダーとの対話が有効です。様々な業種を俯瞰的に見ている投資家との対話は、新たな視点を見出すきっかけにもなります。投資家との対話の窓口となるIR部門と、それを広くステークホルダーに伝えていく広報部門が連携してコミュニケーション戦略を考えると、より良いものになると思います。

Q2 最近話題のESG投資。「ESG」と「SDGs」がセットで語られることが多いですが、その関係性は?

A SDGsの各目標はESGのいずれかの項目に関連している

ESG投資とは、E(環境)やS(社会)やG(ガバナンス)といった視点を投資に組み入れるものです。“ESG”的視点からいうと、例えば汚染物質を排出する企業への投資を避けたり、財務情報だけでなく「ESG要因」を考慮して投資をしたり、また、株主として議決権を行使することでESGの改善を促すことも行っています。

欧州に比べると、日本のESG投資の割合はまだ低いのが現状。しかし昨今、ESG視点は「投資倫理」から「投資原則」へと移行しつつあります。つまり世の中のモラルを意識したものではなく、“当たり前”の視点になっているのです。

SDGsがビジネス機会創出

「ESG」は、国連サミットが2015年に定めた「SDGs」とは異なる経緯から生まれています。しかし、SDGsの17の各目標は、ESGのいずれかの項目に関連しています(図1)。

図1 ESGとSDGsの関係

出所/国際連合広報センターから大和総研作成

投資家から見ると企業がSDGsの中の自社にとって重要な項目に取り組むことは、広い意味で企業価値の向上につながったり、将来のビジネスチャンスにつながると捉えています。SDGsに取り組んでいることをうまくコミュニケーションして新規顧客を獲得することもできます。逆を言えばSDGsに取り組まないと将来サプライチェーンから除外されるリスクを抱えることにもなります。

またSDGsに積極的に取り組むことを通じて、ESG資金を受け入れて資金調達も容易になる可能性が大きくなります。ハーバード大学の調査(*1)においても、人的資本、サプライチェーンなどに配慮する企業は、コロナショック時でもネガティブな株式リターンが少なくなる傾向が見られています...

*1 Corporate Resilience and Response During COVID-19

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