社史や理念、事業の意義を見直す機会となる周年をどのように迎えるか。長寿企業から学ぶ連載です。


2019年3月19日、監督官庁や取引先の関係者、OB・OGら約400人を招いた「感謝の集い」を横浜港大さん橋国際客船ターミナルで開催。オリジナル楽曲にあわせ、「しゃぽぽ」がステージパフォーマンスを披露。
東京都内や近郊を走る黄色い観光バスでおなじみの「はとバス」が2018年、創立70周年を迎えた。1949年3月の定期バス運行開始からの累計利用者数は約5464万人(2019年2月までの累計)に達しており、東京観光の代名詞として知られている。
近年はピーク時だった1960年代と同水準となる年間90万人前後の利用者を確保しているが、この70年は決して順風満帆ではなかった。バブル崩壊後には業績が落ち込み、1990年代後半から2000年代にかけて倒産寸前まで陥った時代もある。
「今では当時の経営危機を知らない若い世代も多数働いています。今から10年前、60周年の記念事業を経験していないメンバーにノウハウや会社の歴史を共有したいという考えもあり、今回の70周年プロジェクトでは入社1〜4年目の若手を中心に立候補制でチームを組みました」。そう説明するのは、はとバスの上席執行役員で広報室長の石川祐成氏だ。
社内投票でキャラクター決定
立ち上げたのは以下の4つのチームだ。❶商品開発(70周年記念の商品開発を担当)❷プロモーション(新規顧客開拓のための展示会出展など)❸イベント(利用者への感謝行事など)❹企業価値向上(サービスの質の見直しなど、社内向けの活動が中心)で、経営企画室を事務局とした。役職者が各チームのリーダーとなり、部署横断で若手社員がそれぞれ約10人ずつ所属する形とした。本社勤務の社員だけでなく、運転士やバスガイドなど現場に出ている社員も参画している。
中でも特に力を入れたのが公式キャラクターの開発だ。「以前からオリジナルのキャラクターが欲しいという声は多かったんです。実現には時間もコストもかかりますが、70周年は絶好の機会。社外のデザイナーからコンペで案を募り5〜6点に絞ったのち、社内投票を実施することになりました」。
そうして誕生したのが「しゃぽぽ」だ。「おしゃれと旅行が好きな女の子」という設定で、フランス語の帽子を意味する「シャポー」と、ハトの鳴き声である「ぽっぽ」から命名した。2018年9月に東京ビッグサイトで開催された旅行ビジネスの展示会「ツーリズムEXPO」で初お披露目して以降、展示会やステージイベントでは着ぐるみ姿で登場している …