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企業変革を促す 社内コミュニケーション

経営者も広報も悩んでいる「社内コミュニケーション」の課題解決法

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

企業文化や組織風土、従業員エンゲージメントの重要性が語られている今。社内コミュニケーションやブランディングに携わる広報がぶつかる壁とは。経営者や従業員への理解浸透、効果測定など実践・運用面から紐解いてみよう。

急成長企業や事業継承時に多い悩み

企業理念や経営ビジョンを正しく社員が理解することの重要性はいうまでもない。だが、実際にこれを十分行えているかというと、不安に思う経営者は多い。一方で、広報担当者の多くが、社員向け広報(インターナルコミュニケーション)の必要性を感じながらも、対策ができていなかったり、同じコミュニケーション活動でも社外向け(エクスターナルコミュニケーション)をつい優先したりしがちである。

一見、うまく事業が回っている印象のある企業のオーナーや社長の方から「社内ブランディング(インターナルコミュニケーション)に課題がある」と相談を受けることも多い。多くは急成長中の会社で、社員数は100人~500人規模だ。中でも「去年までは社員数100人だったが、今年新卒を30人採用した」といったように、短期間に社員数が急増した企業のケースが多いと感じている。

一般的に入社して間もない社員は、自社ブランドを十分に把握できていないことが多い。一方、長年働いている社員も例外ではない。会社が急成長を遂げたり、事業の多角化や業態の変化、あるいはグローバル化したりと急激な変化が起きた場合に「自社ブランドが過去とは大幅に変化している」ことを理解できないというケースもある。

また、カリスマ的創業者の情熱とパワーで急成長してきた企業が事業承継するフェーズでも、同様の事態に陥りやすい。これまでは創業者が現役で常に一線にいたため、何とか会社全体が"一枚岩"でやってこられたが、やがて創業者の理念が「言葉」としては残っても、その真意まで社員に理解浸透させることが難しいという相談もある。二代目社長の多くが抱える悩みだ。

こうした企業の場合、ある程度の限られた期間に、社員が会社のブランドをしっかり把握し、帰属意識を高める「プログラム」が仕組みとして必要になる。同時に、単に社員の会社への帰属意識を高めるだけでなく、いかに日々の業務のモチベーションを高めていけばよいのか。最近よく懸念されている"風通しの悪さ"や膠着した"縦割りの社風"といった組織課題をコミュニケーション部門が中心となって、どう克服していくのかは重要な課題だ。

しかし、社内では、「重要ではあるが緊急ではない」とみなされて後回しにされてしまう現実がある。どうしてもセールスや企業ブランディングに直結するコミュニケーション活動が優先されがちだ。

そのような時に私は多くの場合、図1を示して経営者の方に重要性を説くことにしている。

図1 企業の広報活動 4つのタイプ

企業コミュニケーションを4つの事象で整理

図1の右上の事象の「攻め」×「外向け」が企業コミュニケーションにおいては「売上に直結する」ため優先されがちである。だがその左の「攻め」×「内向け」のコミュニケーションが十分でないと、右上の「攻め」×「外向け」の展開は実現できない。

なぜならば、自社の社員でさえ「企業理念」「経営ビジョン」など自社に関わる重要なアイデンティティを理解せず、会社に信頼と忠誠心を持たないならば(「他人ごと」に過ぎないのであれば)、顧客や他のステークホルダーに、自社や自社商品のブランドを「自分ごと」として感じてもらうことなど絶対に不可能だからだ。

また、左下の「守り」×「内向け」に位置する「ガバナンス」の領域の強化なくして、社員の心的な結束(モチベーションの向上)も成り立たない。顧客に提供するサービスの低下や社内モラルの低下が避けられなくなる。さらに、不祥事などを誘発する危険性も高まる。

仮に、右下に位置する「守り」×「外向け」のリスクマネジメントに自社のコミュニケーション担当が追われる状態になると、右上の「攻め」×「外向け」のコミュニケーション活動は、当然おぼつかなくなる。積極的な対外コミュニケーションも、一時自粛を余儀なくされる。

図1の左半分にあたる「攻め」「守り」のインターナルコミュニケーションを、単なる企業スローガンの暗唱など形式的な行為で終わらせることなく、より合理的なマーケティング思考で、自社の強みや弱みなどを客観的に分析する必要がある。現在の自社の課題や中長期的な目標を設定し、継続して実施していきたい。

期待される「効果」を把握し、整理しよう

中にはすでに全社的な経営課題のひとつとして、インターナルコミュニケーションを重視している企業も多い。「企業理念」「経営ビジョン」に関する言葉を社内で繰り返し何らかの方法で露出させ、社員のマインドに定着させようと対策を進めている企業もあるだろう。「企業理念」と「経営ビジョン」などが、全社員にしっかりと共有され定着していることは確かに重要だ。

だが、ただ「伝える」「覚えさせる」ではまったく意味がない。重要なことは社員一人ひとりの意識を変え、能動的にアクションを行う状況になることだ。だがインターナルコミュニケーション施策は、直接的に利益(購買獲得)につながる活動ではない。関連部門が費用や時間を投資しても、投資対効果が測りづらい側面がある。これは全社的な優先順位が下がってしまう理由のひとつでもある。

また、インターナルコミュニケーションの効果測定自体が非常に難しい。創業時から受け継がれた経営理念が、今の時代にそぐわないこともある。そうなると現在の広報担当者の力だけではなんともしがたい。創業時からは比較にならないほど、多角化、グローバル化した実務レベルの日々の業務において、経営理念として描かれたブランドイメージと実際の業務との間にギャップが生じ、具体的かつ能動的なコミュニケーション活動に落とし込めずに悩む担当者がいる。

こうしたインターナルコミュニケーションを取り巻く難しい状況においては、まずは一度、担当部門が中心となって、インターナルコミュニケーションの「効果」の整理を総論として行うことを勧めている …

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