経営者も広報も悩んでいる「社内コミュニケーション」の課題解決法
企業文化や組織風土、従業員エンゲージメントの重要性が語られている今。社内コミュニケーションやブランディングに携わる広報がぶつかる壁とは。経営者や従業員への理解浸透、効果測定など実践・運用面から紐解いてみよう。
企業変革を促す 社内コミュニケーション
2018年にカルチャー変革本部を設置し、社内変革プロジェクトを進める日本電気(NEC)。同本部長の佐藤千佳氏とコーポレートコミュニケーション本部長の飾森亜樹子氏が、11万人のグループ従業員と対話をしながら進めてきた変革の過程を振り返った。
佐藤:カルチャー変革本部は、人事・働き方・コミュニケーションに関する専門性を持つ部署から約15人を集めて新設された部署です。社内変革プロジェクト「Project RISE」をけん引しています。
私は、様々な会社で人材・組織開発やI&D(インクルージョン&ダイバーシティ)の推進を行ってきた経験を活かして、このプロジェクトの音頭をとるために入社しました。
飾森:この時期、佐藤さんをはじめとして様々なプロフェッショナル人財を外部から呼び込んでいました。これは、会社の変革への本気度の表れです。広報では、社長インタビューなどを通じて、あえてメディアに「NECを徹底的に変革する」というメッセージを発信していきました。「NECは大企業病」などの厳しい報道も覚悟の上でした。本気度を広く伝えることで、社会からの見られ方も変わり、社員への強いメッセージにもなるのです。
佐藤:今回の中計で重視されたのが「実行力の改革」、一言でいうと"やり抜く組織"づくりです。そのために、「経営の結果を厳しく問う」「イノベーティブな行動や挑戦を促す」「市場の変化・複雑化にスピーディーに対応する」という3点を実行していくことが求められています。
社長の新野(隆)は中計の内容を説明するために国内外の拠点で「中計ダイアログ」を実施しました。その際に「セッションは有意義だったか」「改善できることはあるか」などといった内容のアンケートを実施し、約1万人分を回収しました。その声を集約したのが「目指す姿」(図1)です。
図1 目指す姿
飾森:会社に対する要望はもちろんたくさん出たのですが、それ以外に「会社の本気度を感じた」「初めて生で社長を見ました」などといった反響もありました。社長が自ら各地に足を運んだことにも大きな意味があったと感じています。
佐藤:私たちは、その「目指す姿」を分析し、「変革のキードライバー」として6つを定めました(図2)。この中の「プロセスと仕事のシンプル化」や「社員の主体性と創造性を引き出すしくみ」などは中計で定められている目標とも合致していて、これらの課題が社員から出てきたのも収穫でした …