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炎上後の広報スタンスは3パターン

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

炎上後の広報スタンス
アウトドアブランド、ザ・ノース・フェイスのネットキャンペーンが炎上した。ウィキペディア上の写真を自社ロゴ入りの服を着たモデルの写真と差し替えたためだった。

ウィキペディアは5月、ザ・ノース・フェイスと広告会社のレオ・バーネット・テーラー・メイドが非倫理的な方法でウィキペディアを操作したと非難した。自社ロゴ入りの服を着たモデル入りの写真を、ウィキペディア上の画像と差し替えた行為に対するものだった。

旅に出かける前に多くの人がグーグルで検索しており、その検索結果の1位の多くがウィキペディアのページであることに着目したザ・ノース・フェイスが、「ウィキペディアの絶景スポット紹介ページでブランドのロゴマークが写り込む画像を掲載すれば、イメージ検索で1位になれる」と考え、取り組んだキャンペーンだったという。

実際に検索1位になった成果を自慢げに伝える動画を制作・公開したことでウィキペディアが激怒、ザ・ノース・フェイスはキャンペーンを取りやめて謝罪に追い込まれた。

ネットは「初の試み」に走りがち

ネットキャンペーンでは、どれだけ注目を集めるか、バズるか、など反響の大きさが成功指標になりやすい。それがゆえ、まだ誰もやっていない「初の試み」を志向しがちである。それが最も大きな反応を得やすいからだ。

今回の場合も、「これはNGだろう」と思った人や声を挙げた人が関係者の中にいたかもしれないが、保守的なブランドならまだしも、冒険心や前人未踏といった方向性がブランドメッセージに紐づきそうなザ・ノース・フェイスなら、「やってみる価値あり」という声に押されたのかもしれない。実際、「それに伴うネガティブな反応も予想していたようだ」とも報じられている。

ただここで注目したいのは、事の是非よりも炎上後の広報スタンスだ。

炎上後の対応は3パターン

炎上後に企業が取るスタンスは大きく分けて3つある。①取りやめる(例:阪急電鉄「はたらく言葉」)②今後の参考にする・変えるかどうかは分からない(例:講談社『ViVi』自民党キャンペーン)③問題ない・今後も変えない(例:カネカ パタハラ批判)である。スタンスの意味はそれぞれ異なるものの、対応の違いは明確にある。

今回のザ・ノース・フェイスは、結果だけ見れば①だが、その理由が目を引いた。同社の謝罪コメントは「ウィキペディアの原則にそぐわない取り組みであったことに謝罪します」「今後は我々のチームも広告会社もウィキペディアの方針をよりよく理解して取り組みます」といった表現だった。ウィキペディアが非倫理性を批判したのに対し、ザ・ノース・フェイスはウィキペディアというサイトの方針に合っていなかった点のみを謝罪したということだ。つまり今後も「冒険」をやめるとは言っていない。

炎上後、謝罪の有無に注目が集まりやすく、またそこでは定形的な表現を使ってしまいがちだが、対応をどうするにせよ、広報は、その場その時その組織に合った姿勢を伝える最適な表現方法を選べるようにしておきたい。

社会情報大学院大学 特任教授 ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会情報大学院大学特任教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net

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