観光施設のユニバーサルデザイン化を進めてきた伊勢志摩バリアフリーツアーセンター。ユニバーサルデザイン化が困難な伊勢神宮では参拝介助ボランティアの協力を得て、地元住民を巻き込んだ観光マーケットの活性化に成功しました。

旅行客に同行する伊勢おもてなしヘルパー。神宮参道の砂利道は特別仕様の電動車イスで安全に踏破する。

石段は軽い車イスを使い、座ったまま昇降できる。3人必要だが、同行者によって人数は変動する。
私が本職の水族館プロデューサーとして必ず意識している、集客理論において大切なことがあります。これはバリアフリー観光を進めているときに気づいた真実です。
それは「観光マーケットはコミュニティマーケットである」という理論。すなわち、観光(旅行)の多くは、カップルや家族、グループ、ときには団体などコミュニティで消費されるということです。私の造語「コミュニティマーケット」には、その人たちの観光の選び方の原則が含まれるのです。
その原則とは、旅行を計画するコミュニティが行き先なり宿なりを決めるとき、人気の多数決で決まるのではなく「不人気でないところ」に決まるという特徴です。
観光の魅力を重視したUD化
例えば、三世代5人家族のうち子どもたちと母親の3人が有名テーマパークに行きたいと主張したとしても、たったひとりのお婆ちゃんが絶対に行きたくないと言い張れば、テーマパーク案はあっさり取り下げられ別の場所になります。つまり観光におけるマーケットは、コミュニティの誰もが否定しない場所を選ぶということなのです。
この理論を知っているのと知らないのとでは、水族館のつくり方もアピールの仕方も違うし、もちろん集客には大きな差がでます …