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広報担当者のためのマーケティング発想再入門

非営利組織に求められる「戦略PR」発想

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

マーケティング活動の一環としてPRを行う「マーケティングPR」。筆者の実務経験をもとに、基本と実践のポイントを解説します。

2011年から2015年にかけて長期医療支援活動を得意とする国際NGOの広報を務めた。そのこともあって、NPOを中心とした非営利組織から広報やマーケティング活動に関する相談を受けることが多い。

一方、ここ数年は逆に民間企業側から「どうやったらNPOなどの非営利団体とコラボすることができるのか」というような相談も受ける。改めて、これまで以上に非営利組織が社会に根付き注目されてきていると実感する。

今回はNPO側の広報と民間企業の広報、そしてメディア企業の広報を務めてきた視点から、それぞれの組織にどうやったら相乗効果の生まれやすいコラボレーション(CSV/共創活動)ができるか考えたい。

以下は私自身の解釈になるが、NPOの対外コミュニケーション活動には大きく3つの切り口があると考えている。
❶ファンドレイジング(資金獲得)
❷アドボカシー(啓蒙/証言活動)
❸活動報告/レポーティング(支援者や関係団体向け)

大規模企業などに比べると一般的には活動資金や人的リソースの限られている非営利組織では、コミュニケーション業務の担当者1人で幅広い活動を並行して行うことが普通だ。それだけに、自分たちで団体の対外活動全般を一度整理して考える必要がある。一見「広報」に類する活動でも目的や実務は大きく異なるものだからだ。

私がNPOで働き始めて最も特徴的だと感じたのは「ファンドレイジング」と呼ばれる活動資金獲得のためのコミュニケーション活動だ。

ファンドレイジングとPRの考え方

一般的な企業の場合、商品やサービスを顧客に提供し、その対価を顧客から得ることでビジネスが成り立つ。当たり前に思えるかもしれないが、非営利団体の場合はこの通りとは限らない(図1)

図1 民間企業と非営利団体 コミュニケーションの違い

通常、企業が自分たちの商品やサービスのことを宣伝PRする理由は、顧客に商品の持つ価値や利用メリットを知ってもらい、購入してもらうためである。一方、非営利団体の場合、その多くは寄付を行う人にメリットは直接的に還元されない。

このため非営利団体の広報担当者は、直接的なメリットの代わりに「寄付」を行うことの「社会的意義」を支援者に伝えなくてはならない。団体独自の支援スタイルや特徴を知ってもらうと同時に、自らの活動の「社会的意義」「社会的課題」を啓蒙活動を通じて理解してもらわねばならないのだ。この点が民間企業と非営利団体のコミュニケーションの最も異なる点である。

例えば民間企業が1個100円のパンを顧客に販売するビジネスをしようと思えば、顧客が100円を払いたいと思うパンとはどういうパンだろうかと考えて商品を開発し、宣伝・販売方法を考える。一方、NPOの場合は、支援者が100円を寄付して援助したいと思う「パンの価値とは何か」は普通は考えない …

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