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地域活性のプロが指南

バリア情報の開示と共有で前進 地元の観光事業者に研修も

中村 元(伊勢志摩バリアフリーツアーセンター 理事長)

「伊勢志摩を日本一のバリアフリー観光地にする」という目標に向けて、障害を持つ人たちとバリア情報の調査を始めようとしたツアーセンター。「障害者の数だけバリアの数がある」という気づきが起点になりました。

伊勢シーパラダイスでのバリアフリー調査の様子。階段の多い歴史ある施設だが、柵なしで海獣と触れ合えるため人気が高い。その事実を伝えるだけでも調査の意味がある。セイウチは盲導犬にも驚かないことが判明し、車イス利用者や視覚障害者に人気となった。

旅館のバリアフリー調査の様子。高齢で身体が不自由な人は入浴を楽しみにしているため、車イスでの利用がほぼない大浴場も調査する。

バリアフリーによって観光客を増やすという前代未聞の計画の勝算は、レジャー好きな副理事長の行動にヒントがありました。彼は車イスに乗っていますが、旅行も食事も行きたいとなったら、ツテを頼りバリアフリー情報を集めて実現します。バリアがあれば健常者の友人を誘うのも実現への重要要素のひとつです。

「行きたいところができたら情報を集めるんだけど、それがけっこう大変」。この短いフレーズには、バリアフリー観光を計画しようとしていた私にとって、実に重要な2つの真実が含まれていました。

ひとつは、「バリアフリーだから出かけるのではなく、行きたい(魅力のある)ところだから出かける」という真実。つまりレジャーへの動機は、健常者も障害者も同じなのです。こんな当然のことを健常者は忘れています。そしてその誤解こそが、多くのバリアフリー化事業が陥るつまずきです。「障害者は弱者であるから施されるべき」という歪んだ常識によって、観光政策さえも福祉政策に変わり意味を失うのです。

もうひとつの重要要素とは、それまでは観光レジャー関係者からバリアフリー情報が発信されていなかったという事実です …

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