複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2019年3月12日
関東信越厚生局麻薬取締部は3月12日、東京都内またはその周辺でコカインを使用したとして、音楽グループ「電気グルーヴ」のメンバーで俳優のピエール瀧を麻薬取締法違反容疑で逮捕した。これを受け、ソニー・ミュージックレーベルズやNHKは、CDや映像作品の出荷・販売・配信停止などの対応を発表。一方、東映はすでに完成していた映画の公開を決めた。
音楽グループ「電気グルーヴ」のメンバーで俳優のピエール瀧が3月12日に麻薬取締法違反容疑で逮捕されました(4月2日に同法違反罪で起訴、同月4日に保釈)。これを受け、翌13日には電気グルーヴが契約しているソニー・ミュージックレーベルズが、公式ウェブサイトに謝罪文を掲載。かつ、CD・映像作品の出荷停止と店頭在庫回収、音源・映像のデジタル配信の停止を発表しました。
同日、NHKはピエール瀧が出演中の大河ドラマ『いだてん』について「本人の出演シーンをカットし、代役を立てて放送を継続する」と発表。さらに、過去に出演したドラマについても、「インターネット配信を当面停止する」としました。
このように各社による「自粛」があった一方で、「継続」を選ぶ企業もあり、対応が分かれました。そこで、今回はピエール瀧逮捕後の各企業の対応を題材に、企業不祥事などの「危機」が発生したときの企業活動の自粛にも関わる広報対応を検討します。
行き過ぎた"コンプライアンス"を防ぐ
ピエール瀧逮捕後のCD、映像作品の出荷停止などに関して、ソニー・ミュージックレーベルズは「今回の逮捕という事態を厳粛に受け止め、企業としてコンプライアンスを重視する立場から決定しました」とコメントしました …