複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2018年11月19日
日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が役員報酬を約50億円分過少記載していたとして、有価証券報告書虚偽記載罪(金融商品取引法違反)で逮捕(12月10日に同罪で起訴)された。同日、同社の西川廣人社長は午後10時からグローバル本社で会見を開き、約2時間にわたり記者らの質問に答えた。
2018年11月19日、日産自動車のカルロス・ゴーン会長(当時)が役員報酬を過少記載していた有価証券報告書虚偽記載罪(金融商品取引法違反)で逮捕されたことが、世界規模で話題になりました。これを受けて、西川廣人社長兼CEOは同日午後10時から横浜市内のグローバル本社で緊急記者会見を実施しました。今回はこの会見を題材に、企業に重大な不祥事があった場合の危機管理広報のあり方について分析します。
メディアとの敵対は極力避ける
重大な不祥事が起きたときに広報に求められるもののひとつは、スピード感です。今回、朝日新聞による「ゴーン会長逮捕へ」のスクープと、各社で東京地方検察庁によるゴーン氏の事情聴取が報じられたのが19日午後5時すぎ。続いてゴーン氏逮捕の事実が報じられたのが同日午後6時すぎでした。
これに対して、日産自動車が「当社代表取締役会長らによる重大な不正行為について」と題するリリースを公表したのは同日午後7時ちょうど。記者会見の案内を出したのが同日午後9時前で、会見の開始は同日午後10時と、非常に手際よく事が進みました。記者会見の案内を出す直前には、すでに同社グローバル本社のホール前にメディアが集結。会見場では、西川社長が開始予定時刻より2分遅れで姿を見せたものの、現場では大きな混乱はなかったようです …