複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2019年1月23日
日清食品ホールディングスは、テニスプレーヤーの大坂なおみ選手を起用したカップヌードルのアニメーション動画広告を削除した。漫画『新テニスの王子様』とのコラボレーション企画で、2019年1月11日から同社の公式ウェブサイトで公開されていたもの。「大坂選手の肌の色が実際よりも白く描かれている」との批判が国内外から相次いだことで、22日以降、大坂選手に対して「配慮が不十分だった」などと謝罪した。
日清食品ホールディングス(HD)が、2019年1月11日からウェブ上で公開していたカップヌードルのアニメ動画広告。テニスプレーヤーの大坂なおみ選手の肌の色を白く描いていたことに対し、国内外から「ホワイトウォッシュ(褐色の肌を漂白した、の意味)」ではないかとの批判が集まりました。同社は大坂選手に対して謝罪し、1月23日に2本の動画を公開停止するに至りました。今回は、このケースを題材に、企業広告が人種差別などと批判されないように意識しておくべき広報のポイントを取り上げます。
世界規模の批判は想定外だった!?
本件はアメリカの『The New York Times』で取り上げられ、その後イギリスのBBCや『The Guardian』でも報じられるなど、海外でも大きな話題になりました。同グループ広報部は、「肌を意図的に白く表現しようとしたわけではない」「アニメの世界観をできる限り再現した」などとコメントしていたので、世界規模の「人種差別」批判に発展するとは想像していなかったように思えます。
しかし、今回のケースのように、その内容が「人種差別」と批判された企業広告は少なくありません。最近の事例では、日用品ブランドのダヴ(ユニリーバ)が、2017年2月に公開したボディウォッシュの動画広告や、2018年1月にH&Mがウェブサイト上に公開したパーカーのロゴの問題などが著名です。
このような炎上事例が相次いでいる現在では、企業が広告を制作するにあたって、その内容が「人種差別」との批判を招く恐れがないかどうかまで意識してチェックしなければならない時代になっている、と理解しておかなければなりません …