複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2018年8月28日

厚生労働省の入る中央合同庁舎第5号館(東京・千代田)
中央省庁が雇用する障害者数を水増ししていた問題で、政府が関係閣僚会議を開き、全体の8割に当たる27機関の計3460人分を水増ししていた事実を公表した。10月22日には弁護士らでつくる国の検証委員会(委員長・松井巌元福岡高検検事長)が報告書を発表。新たな事実も判明し、水増しの実人数は28機関の3700人と特定した。
厚生労働省は2018年8月28日の関係閣僚会議で、中央省庁が雇用する障害者数を水増ししていたことを発表しました。弁護士らでつくる検証委員会が10月22日に発表した報告書によると、2017年6月時点で28機関の計3700人の障害者が国の指針に反して不正に算入されていることが分かりました。以降、全国の自治体や独立行政法人でも、同様の障害者雇用の水増しの事実が続々と明らかになっています。
監督する立場の行政がまさかの不正
民間企業では、障害者雇用促進法の改正により2018年4月1日から障害者を2.2%以上雇用することが義務づけられています(従前は2.0%)。常時雇用者数100人超の企業が法定雇用率を達成できない場合は、不足数一人当たり5万円/月の納付金を支払わなければなりません。そのため、企業は制裁を回避するように、必死の努力をして障害者を雇用しているのです。
民間企業を指導・監督する立場であり、率先して障害者雇用を進めるべき中央省庁が「水増し」という不正をしていたことは由々しき事態です。世間からは中央省庁をはじめとした行政機関のコンプライアンス意識の低さを批判する声が挙がりました。
水増し問題は、行政だけでなく企業でも起こりうる問題です。本件は、企業の危機管理広報を考えるうえでも参考になる事例なのです。企業でこのような問題が発生した場合、少なくとも次の3つの観点を意識して広報対応をしなければなりません …