複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2018年8月8日
国内のアマチュアボクシングを統括する日本ボクシング連盟の会長を務めていた山根明氏が辞任を表明した。そのきっかけとなったのは都道府県連盟幹部や元選手ら333人でつくる「日本ボクシングを再興する会」が7月27日付で日本オリンピック委員会などに送付した告発状。この中で、オリンピック強化選手に支給された助成金を不適切に使っていたことや、審判に不当な圧力をかけて試合結果を操作した疑いなどが指摘されている。
日本ボクシング連盟会長の山根明氏は、2018年8月8日に辞任を表明。22日には理事全員が辞任することを公表し、体制を刷新することになりました。
事の発端は、都道府県連盟幹部や元選手ら333人の有志からなる「日本ボクシングを再興する会」が、7月27付で提出した告発状。日本オリンピック委員会(JOC)や日本スポーツ協会などに対して、日本ボクシング連盟内での複数の不正に関する内部調査や資格停止などの処分を求めたものです。提出からわずか2週間足らずで山根氏は辞任に至ったので、内部告発が有効に機能したと評価できます。
企業において、社内の不正を一部の社員が内部告発、あるいは監督官庁に告発するケースが増加しています。その一例は、証券取引等監視委員会への告発がきっかけで判明した東芝の不正会計事件です。このような告発があった場合、広報はどのような対応をすればよいのでしょうか。内部告発に対する日本ボクシング連盟や山根氏の一連の広報対応を例にしながら解説していきたいと思います。
広報対応の初動が「取材拒否」
同会が告発した不正のひとつに、助成金の流用問題がありました。山根氏の指示により、日本スポーツ振興センターがリオオリンピック(2016年)の出場選手に交付した助成金240万円を、連盟内で3等分して対象外の選手にも渡していたのです …