複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2018年5月15日
スマートデイズ(旧スマートライフ)のシェアハウス「かぼちゃの馬車」への投資の融資に関して、資料改ざんなどの不正が相次いだ問題で、スルガ銀行(静岡県沼津市)の米山明広社長が初めて会見を開いた。多くの行員が不正を認識していた可能性があるとして謝罪したが、詳細については、第三者委員会の調査に委ねるとして、銀行の不正に言及することはなかった。
自己資金ゼロで不動産投資ができるとして、サラリーマンらに1億円前後のお金を貸しつけていたスルガ銀行(静岡県沼津市)。融資の際、行内での審査を通しやすくするためや、より多額の融資を受けられるようにするために、行員が書類を改ざんしていたことが発覚しました。報道によると、借り入れ希望者の年収、預貯金額、土地売買価格を水増しするなどの不正が多数行われた、とされています。
今回は、この不正融資問題に対する一連の広報対応を危機管理の観点から分析していきます。
問題の表面化で株価が下落
この問題が表面化するきっかけとなったのがスマートデイズ(旧スマートライフ)の行き詰まり。同社は2013年から投資目的の所有者が建設した物件を、シェアハウス「かぼちゃの馬車」として一括借り上げし、転貸していました。その物件の建設や取得資金を貸しつけていたのがスルガ銀行です。5年間でシェアハウスの所有を希望する1258人に対して、物件の取得資金総額2035億円を融資していました。
2018年1月、所有者に家賃が支払われなくなったことで、所有者がスルガ銀行に融資の返済ができなくなり、問題が発覚しました。にもかかわらず、同行は5月15日に米山明広社長が記者会見するまでの約4カ月間、公式の場で問題を説明しませんでした …