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実践!プレスリリース道場

業績好調「いきなり!ステーキ」の広報戦略を分析

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

私は飲食業界に知り合いが多くいます。誰に景気を聞いても渋い答えが返ってくる昨今、皆が口をそろえて「今、イケイケなのは、『いきなり!ステーキ』だけだよ」と言います。

2013年の営業開始当時は立ち食い形式に抵抗を覚える人も多かったようですが、コーヒーやデザートを提供していないため、椅子を置いても滞在時間に大差ないことが判明。椅子席の店やロードサイドへの出店が拡大してから急成長を遂げ、この夏には国内300店舗も達成しました。そんな「いきなり!ステーキ」を経営するペッパーフードサービスを取材し、広報も大胆な展開をしていると感じました。

早速、1番目のリリースを見ていきましょう。「いきなり!鳥取県で大行列!」というリリースで、(ポイント1)行列ができただけでリリースを配信しているのがユニークなところ。しかもよく読むと、秋田県に出店すれば47都道府県を制覇するという内容になっています。通常なら、コンプリートした時点でリリースを出すところを46番目で出しているのです。



その理由を広報担当で営業企画本部営業企画推進部主任の小林未佳さんに聞いてみると、もともと利用者やメディアから「最後はどこの県ですか」という問い合わせが多かったといいます。さらにスターバックスが鳥取県に出店して全国制覇した際に世間で大きな話題になっており、「鳥取は引きがある」と感じていたそうです。

小林さん自身はオープンに立ち会えなかったものの、開店時には営業が必ず写真を押さえています。現地に出向いた一瀬邦夫社長から翌日「鳥取の新規オープンがすごかった」という話を聞き、すぐにリリース配信を決定。わずか15分ほどで原稿をつくり、翌朝には配信してしまうスピーディさ。この行動力には圧倒されます。

見出しとビジュアル重視

リリース自体もお客さんが並んだ写真を大きく使い、吹き出しや店頭写真などで補足するシンプルな構成。セオリーに従うなら初日の動員客数、お客さんや店長の声などを入れたくなるところですが、「私の頭の中に入れておき、問い合わせていただいたら答えるようにしています」という潔さ。

それというのも、ほとんどの記者は見出しとビジュアルを見ただけで電話をかけてくることが多く、「このポイントを中心に書けばメディアが注目する」という小林さんの経験則があるからだそうです。

このニュースは全国メディアで紹介されたほか、中国地方のテレビやラジオでも取り上げられました。私も経験がありますが、地方局の番組では全国ネットよりも長めに尺を割いてくれるので、見てくれた人の反響も大きいのです。車社会なのでラジオの影響力も大きく、「車の中で聴いてそのまま来た」という声もよく聞くそうです。

逆転の発想で「達成」発信

2番目は「ペッパーランチ既存店売上高66カ月連続プラス記録」というリリースです。(ポイント2)達成リリースの一種ですが、グラフを入れてインパクトのある構成にしています。この配信の経緯も面白く、実は67カ月目に連続記録が途切れてしまったのだそう。通常なら「残念」で終わるところを「66カ月も続いたんだからすごい」と逆転の発想でリリースにしてしまったのが、転んでもただでは起きないバイタリティです。



ネガティブではなくプラスに捉え、上層部も小林さんもすぐに考えをシフトしたそうです。セブン-イレブン・ジャパンの62カ月連続という記録を引き合いに出すことで説得力も生まれています。小林さんが以前にこの数字を記事で見ていたことから、ネットで調べてすぐに引用できたようです。

また1枚目は記録だけを伝え、2枚目をめくると67カ月目で途切れたことが書いてあるなど、マイナス要素は2枚目に回す配慮を感じます。書き方次第で、同じ事実がプラスに伝わるよい例ですし、会社はここで原点に帰り、68カ月目からはまたプラスに転じているそうです。

問い合わせでは「ペッパーランチといきなり!ステーキって同じ会社だったの?」という反応も意外に多かったそうで、今後、ペッパーランチにも注目してもらう意味でも有効なリリースだったと思います …

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