ここ数年で、広報PRパーソンの仕事もずいぶんと多様化した。「これも広報の仕事なの?」「PRパーソンとしてここも勉強しておかないと」─読者の皆さんも、忙しい毎日を送っているはず。だからこそデジタルの力による「効率化」がますます大事になる。今月の本誌特集も、そんな時代背景があってのことだろう。
効率化するべき仕事は山ほどあるが、今回のコラムでは、これから明らかにPR従事者の仕事として重要になる「インフルエンサーリレーションズ」に焦点を当てよう。グローバルなPR会社がインフルエンサーとの関係構築のために活用しているツールを紹介したい。
ここでいうインフルエンサーとは、インスタグラマーやYouTuberなど、主にSNS上で影響力を持つ人のこと。最近注目を集めるインフルエンサーマーケティングはもとより、メディアリレーションズが中心であった企業広報、さらには危機管理広報の領域に至るまで、インフルエンサーとの関係構築はPRの重要な仕事になりつつある。
そして、この領域で先を行く欧米で最近顕著なのが、インフルエンサーの「独立化」。キャスティングエージェンシーなどを通さず、直接企業やPR会社と交渉して活動するインフルエンサーだ。これによって、企業の広報担当やPR会社が直接インフルエンサー個人とやりとりする機会が増大している。
こうした中、活用が進むのが、いわゆるインフルエンサーリレーションズツール。例えば、複数の世界的な大手PR会社が契約する、「TRAACKR(トラッカー)」はその代表格だ。トラッカーには欧米のインフルエンサーが数多く登録され、契約した企業やPR会社はトラッカーを通じてリレーションズを管理できる。目的に応じたインフルエンサーや、特定のインフルエンサーが各SNSでどれくらいのフォロワーを有しているか、エンゲージメント率(フォロワーが反応する頻度)はどの程度かを瞬時に知ることができる。
さらに、インフルエンサーとのやりとりの履歴が管理できるのもユニークだ。例えばグローバルPR会社の場合、特定のインフルエンサーに世界中のどの支社がいつ、どんな内容でアプローチしたかなどを把握できる。
「このインフルエンサーには2カ月前にニューヨーク支社がコスメ商品の仕事の依頼をしているな。その前には香港支社がイベントへ招待して断られている」─こうした経緯が確認できるので、次の指針も立てやすい。まさに、広報パーソンがメディアにアプローチする姿勢と一緒なのだ。
PRの仕事が、メディアリレーションズからインフルエンサーリレーションズへシフトするのもそう遠い未来ではないかも。どんどん効率化していい仕事をしましょう。ではまた来月!
本田哲也(ほんだ・てつや)ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/戦略PRプランナー。「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWeek誌によって選出された日本を代表するPR専門家。著作、国内外での講演実績多数。カンヌライオンズ2017PR部門審査員。最新刊に『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。 |