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米国PRのパラダイムシフト

PESOの拡大がもたらした 変わる記者と企業の関係性

岡本純子(コミュニケーションストラテジスト)

新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。

PESO(Paid=広告、Earned=パブリシティ、Shared=ソーシャル、Owned=自社メディア)と、PRプロフェッショナルの領域はどんどん拡大しているが、PRの原点はやはり、マスメディアを通してパブリシティを獲得するためのメディアリレーションズであろう。海外では、メディアリレーションズ以外の比重が高くなっており、メディアと企業の関係性も変化しつつある。その最新事情について掘り下げてみよう。

一流メディアの取材もお断り

7月6日、名門紙ワシントン・ポストのある記事がPR業界で話題になった。コラムニストのスティーブン・パールスタイン氏の記事で題名は「ノーコメント、ビジネス取材の死」というもの。

氏は「働きやすい会社」として評判の高い、漂白剤や洗剤で有名なCloroxという会社に興味を持ち、取材を申し入れた。広報担当者に対し、会社のあるカリフォルニアまで訪れるので、幹部と会わせてほしいという話をしたのだが、その数日後、「幹部は皆忙しいので、申し入れはお断りしたい」という答えが返ってきた。

こうしたつれない対応は実は最近は非常によくあることで、企業側が取材を受けないケースが増えているとパールスタイン氏は嘆く。

これはウォール・ストリート・ジャーナルやフォーチュンなど名だたるメディアの記者たちが声をそろえることだという。例えば、広報担当者に連絡を取ろうとしても、電話番号も担当者の名前も分からないため、メールをして返事を待つのみ。多くの企業が極めて、取材に非協力的だと訴えるのだ。

これは筆者も身に覚えがある。アメリカ在住時、企業に取材を申し入れても、基本は断られるか、まったく返事がない。このどちらかしかなかった。だから知り合いを介する、コネを頼るなど取材には非常に苦労した。日本のメディアだからかと思っていたが、アメリカの超一流メディアに対しても「冷たい対応」は変わらないらしい。

かつては、業界の事情に詳しいベテラン広報担当者がすぐに取材に応じ、またCEOとの定期的な会合の場なども多かったというが、そういった機会は激減している。経験の浅い、若い広報担当者が機械的に「締め切りはいつか、どんなストーリーを書きたいのか、質問を紙に書いて送れ」と言ってくる、とため息をつく。

「敵意さえ感じる」とニューヨーク・タイムズ紙のベテランビジネス記者のコメントも引用して、企業とメディアの関係性の悪化を嘆くのである。過去6カ月の様々な企業のコメントをチェックしてみたところ、TOYOTAを含む多くの会社が「コメントしない」もしくはまったく返答をしなかったという …

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