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記者の行動原理を読む広報術

専門家の露出を増やすには 記者への情報共有が必須

松林 薫(ジャーナリスト)

記者は大学や研究機関に所属する専門家の見識に頼る場面が多い。専門家が「取材されやすくなる」ために、広報ができる準備とは。こうした専門家を通じたブランディングは企業にも応用できる。

大学業界は、18歳人口と大学進学者数の減少によって学生の獲得競争が激化する「2018年問題」の話題で持ちきりだ。こうした危機感もあり、学校の知名度を上げる方法として、メディアの活用が注目されている。新聞やテレビのコメンテーターとして教員や研究者が登場すれば、お金をかけずに受験生やその保護者にアピールできるというわけだ。

しかしメディア露出に関しては、首都圏の有名大学を除けば老舗校でも苦戦しているのが現実だ。筆者も新聞記者時代、名の通った大学の先生や広報担当者から「どうすればもっと取り上げてもらえますか」と相談されることがあった。研究者や専門家を抱える民間企業でも同様の課題を持っているケースは多いだろう。

ネットにない情報を提供

こうした格差が生まれてしまう背景には、記者の「対面取材を重視する習性」がある。電話取材で済ませる場合でも、何度か会って気心が知れた人を優先するのである。このため、アカデミズムの世界では実績や知名度があったとしても、マスコミの集まる首都圏から離れた大学はどうしても不利になるのだ。ただ、こうしたハンディキャップを背負った大学の広報でも、比較的簡単に取り組める方法はある。解説コメントの取材や寄稿に対応できる教員や研究者のリストをマスコミに配るのである。

これはシンクタンク業界では昔から一般的な手法だ。所属する研究員の専門分野や連絡先、メディアへの出演実績などをパンフレットにまとめ、記者に手渡すのである。やり手の広報担当者になると、一覧をカード大の紙に印刷して記者クラブに行き、コメント取りをする機会の多い記者たちの机に貼って回っていた。

広報の方々の中には、「そんなのとっくにホームページに載せている」と反発する人も多いだろう。しかし、ほとんどの場合、「教員一覧」にある情報は、記者にとっては役に立たない。

筆者は経済解説部というアカデミズム担当の部署に長くいたせいで、他の記者から「寄稿やコメントをしてくれる学者を紹介しろ」と、頼まれることが多かった。つまり、裏を返せば記者がネットで検索しても、必要な情報は得られないということである。これは、大学のホームページが主に学生や受験生向けにつくられていることも影響しているだろう …

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