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記者の行動原理を読む広報術

ネットは「事例探し」の道具 メディアを意識した発信を

松林 薫(ジャーナリスト)

テレビや新聞などのメディアがウェブ展開に力を入れる中、現場の記者も、情報収集をネット検索に頼るようになった。オウンドメディアでは、記者のSEO対策が重要になっている。

前回は記者のネタ集めの方法について、業界の事情通や研究機関などを通じた「間接的な情報収集」をテーマに紹介した。今回はそれに続き、記者のネット活用と広報戦略について紹介したい。

ここ2~3年で、新聞やテレビといったオールドメディアも「ウェブファースト」に向けて完全に舵を切っている。テレビ朝日がサイバーエージェントとともに始めた「AbemaTV」や、日本経済新聞社が値上げの際に「電子版は据え置き」という判断を下した事例がその典型だ。同時に取材の現場でも、ウェブを活用した情報収集や記事作成が当たり前になっている。

記者は「エピソード」を探す

メディアの経営体力が落ちて取材経費が削られるなか、「まずはネットで検索」という記者が増えている。本来、暇ネタや企画モノを書くときは、「足を使って」手がかりを得るのが記者のあるべき姿だ。しかし、働き方改革の影響で、メディア業界でも生産効率が重視されるようになった。なじみのない分野を取材するときには、とりあえずネットで情報を集めるという風景はもはや珍しくない。

では、記者がネットで探している情報とはどのようなものだろうか。それは、人が絡む「エピソード」である。ニュースを淡々と伝える雑報と違い、企画モノやコラムなど「読ませる」記事を書くには、象徴的で面白い事例を盛り込む必要があるからである。

例えば2018年5月16日付の日経新聞朝刊1面には、「スタートアップ大競争 都市は競う」という連載の〈下〉が掲載されている。この記事の冒頭は、「ここはもはや遅れているよ」と、香港の企業の創業者が対岸の街を見ながらため息をつくシーンで始まる。その後、企業の話が展開される構成だ。

長めの記事では、このようにルポ風の描写から書き始めるのが「お約束」。日経新聞ではこの書き出しの部分を「冒頭のエピソード」と呼んでいるが、他の新聞やテレビ・雑誌の企画モノでもだいたい同じである。

そのような長めの記事をつくる場合は、記事の中盤でも、動きのある場面を描いたり誰かのコメントを引用したりして説得力を高めなければならない。読者として読むだけなら何ということもない部分だが、実はこうした場面に登場してくれる人を探すのは意外に大変なのである …

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