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記者の行動原理を読む広報術

記者とのコミュニケーションは「人事情報」が武器になる

松林 薫(ジャーナリスト)

4月の年度替わりを前に記者が気にかけているのは社内外の人事。話題に出すことで信頼される広報になる。

ここ半年ほどビジネス書を執筆していたので、書店の新刊・話題書コーナーを観察する機会が増えた。ラインアップを見ていて気づくのが「雑談力」などのコミュニケーション技術を指南する本の多さだ。ビジネスの現場で、会話に悩んでいる人が多いことの裏返しだろう。

実は、広報担当者向けの講演でも「記者とのコミュニケーションが大切だ」と話すことがあるのだが、たいてい客席からあがるのが「会食などの際、記者の方とはどんな話をすればいいのでしょう」という質問だ。確かに、良好な人間関係を構築したい相手に対して、自社商品の説明ばかりだと話は弾まないし、ジャーナリズムについて議論するというのもヘビーすぎる。

そこで本稿では、実は記者が広報担当の皆さんに最も期待していると言っても過言ではない「会話ネタ」をご紹介しよう。

頼れるのは「人事」ネタ

初心者はもちろん、ベテラン広報パーソンでも何も話題が思いつかないときに頼れるのが「人事」ネタだ。特に今の時期は、年度替わりの異動を前に盛り上がりやすい絶好の機会である。

人事情報への食い付きの良さは、官民問わず、組織人であれば誰でも思い当たることだろう。多くのビジネスパーソンにとって、飲み会で最後に行き着くのは「なぜあいつが出世するんだ」といった愚痴も含む人事ネタだからだ。逆に「記者もそうなの?」と拍子抜けするかもしれない。

もっとも、記者が人事ネタを好むのは単純に"組織人だから"というだけではなく、職業病のような側面もある。というのも、記者にとって「トップ交代」を中心とする人事取材で成果をあげられるかどうかが、かなり重要な評価基準になっているのである。言い換えれば、人事ネタを抜けない記者は出世できない。結果として、自社内も含めた人事情報には敏感になるのだ。

図1 人事の話題のスケジュール感

「トップ交代」は共通の関心事

この連載では、記者の行動原理の中心にスクープ競争があると幾度も指摘してきた。その「スクープ」においてどんなネタが重要になるかは部署によってまちまちだ。社会部なら警察の強制捜査や逮捕を事前に報じることが求められるし、政治部なら解散総選挙の時期、経済部ならM&Aなどが焦点になるだろう …

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