日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

大学広報ゼミナール

グローバル化を見据えた 大学のブランディングと知的財産の権利化

榊原康貴(東洋大学 総務部次長兼広報課 課長)

800近くある国公私立大学が受験生や資金を求めて競争する教育現場。スポーツ選手を多く輩出する東洋大学で広報を務める榊原康貴氏が、現場の課題や危機管理などの広報のポイントを解説します。

東洋大学の「VISマニュアル」。ブランドマークの配置や保護領域の指定などを定義している。

大学ではいくつもの知的財産を保有し、また活用しています。研究で生じた特許などからはじまり、授業や研究での文献引用、そして大学そのものを表すシンボルマークである校章やコミュニケーションマークの商標まで数えればきりがありません。特にコミュニケーションマークなどを商標登録されている大学は多いのではないでしょうか。

しかし、こうした商標ですが、登録してから時間が経つにつれ運用が適切に行われず、その形などが微妙に変化していることもあるかもしれません。また、商標の侵害などについては、公共性が高く教育研究の場として高い倫理観が求められる大学の危機管理の観点からも意識したいところです。

そこで今回は大学広報と商標について、東洋大学の事例をご紹介します。

大学でも必要な「商標の権利化」

大学で権利化する必要がある商標はどのようなものでしょうか。例えば文字商標では「大学名」などが代表的な例でしょう。図形商標ではシンボルとなる「校章」「コミュニケーションマーク(サービスマーク)」「大学キャラクター」などでしょうか。特に、視覚的に個性を表している「コミュニケーションマーク」や「大学キャラクター」については権利化しておきたいところです。

商標の権利化にあわせて検討したいものが、その登録区分の役務(サービス)です。例えば商標区分第41類の「教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動」、第16類の「紙、紙製品及び事務用品」あたりは大学では主軸になり、それに係る周辺の役務区分を検討する大学が多いと思います。例えば東洋大学の場合、校章はそもそも限定的な使用(セレモニーやオフィシャルな証書関係)が中心なので、登録役務は少なく想定しています。

一方、「コミュニケーションマーク(東洋大学ではブランドマークと呼称)」(1)や駅伝などで目にする「TUマーク」(2)は各種グッズ展開なども想定されるので、かなり多くの区分で登録をしている状況となっています。

(1)東洋大学のブランドマーク。

(2)箱根駅伝でおなじみの「TUマーク」。いくつかの運動部で使用している。

商標登録で権利化することによって、他者の使用を制限するという防衛的な要素も含まれています。特に日本国内には780もの大学があり、似た名称の大学も多数存在します。コミュニケーションマークなどのモチーフが似ている大学も多い状況です …

あと66%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

大学広報ゼミナール の記事一覧

グローバル化を見据えた 大学のブランディングと知的財産の権利化(この記事です)
気持ちは可視化できるか?応援の先を目指す広報
桐生選手が日本人初9秒台 そのとき大学広報は?
昭和の偉大なる東洋大OB「植木等展」開催の裏側
桐生選手の活躍による広報効果は? 数字の先に見出すストーリーづくり
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する