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大学広報ゼミナール

気持ちは可視化できるか?応援の先を目指す広報

榊原康貴(東洋大学 総務部広報課 課長)

800近くある国公私立大学が受験生や資金を求めて競争する教育現場。スポーツ選手を多く輩出する東洋大学で広報を務める榊原康貴氏が、現場の課題や危機管理などの広報のポイントを解説します。

2018年1月3日、箱根駅伝復路が終わった直後に大手町で行われた東洋大学反省会。「鉄紺」カラーを身に着ける一般の人も多い。


広報戦略をプランニングするにあたり、現在の課題をどう改善するか、そしてその目標が達成されたことをどのように分析するかがとても重要です。広報効果測定のための広告換算やKPI設定も必要ですが、そこがゴールではありません。広報に終わりはなく、効果検証はあくまでも通過点。その先を見通す文脈(コンテクスト)づくりが必要だと感じています。

そこで今回は広報のプランニングで必要なコンテクストについて、箱根駅伝の応援を例に書きたいと思います。

スクールカラーの認知拡大へ

毎年恒例の箱根駅伝、今年で94回を迎えました。東洋大学はおかげさまで10年連続3位以内、優勝4回という強豪校となりました。箱根駅伝はテレビの放送やメディアでの取り上げ方も多様で、まさにお正月の風物詩。そこで私たち広報課も"応援広報"に力が入ります。

ユニフォームとスクールカラーの「鉄紺」をリンクさせ、学内外で定着させる工夫をしたり、壮行会ではメディア招致を積極的に行ったり。中でも、「鉄紺」色の服や小物を身に着けることでキャンパス内をスクールカラーで染め上げる「鉄紺Days」というカラーコードイベントを5年前から実施したことによって、スクールカラーは十分認知される状況になりました。箱根駅伝当日の沿道にもこの鉄紺色を身に着けている方を多く見かけるようになりました。

こうした応援広報を上手く活用して、インターナルブランディングに結びつけることは当初からプランの中に入っていました。インターナルブランディングが上手く機能すれば、帰属意識の醸成に結びつき、口コミ効果や危機管理、将来の支援者拡大へ連なる可能性も見込めます。少々飛躍しますが、「箱根駅伝の応援を盛り上げる」ことから「大学そのものへの応援を盛り上げる」ことへ広報の立場から発展させたいと考えていたのです。

しかし、そうした応援や声援は、どのように届けるものでしょうか。受け取る側もそうですが、応援をする側もその応援が届いているのかよく分からない。その結果、応援が先細りしてしまう、という流れが考えられます。

この見えない応援をより効果的に可視化するために、今回の箱根駅伝で新たに取り入れた仕組みがあります。それが公式ウェブサイト内に組みこんだ「応援ボタン」でした。

「応援ボタン」で気持ちを可視化

「気持ちの見える化」を目指し特設サイト内に設置した応援ボタン。

応援の気持ちを示すことを目的として、サイト上に「応援ボタン」を設置し、ボタンが押されると累計カウンターが上昇する、という仕組みです …

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