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大学広報ゼミナール

昭和の偉大なる東洋大OB「植木等展」開催の裏側

榊原康貴(東洋大学 総務部広報課 課長)

800近くある国公私立大学が受験生や資金を求めて競争する教育現場。スポーツ選手を多く輩出する東洋大学で広報を務める榊原康貴氏が、現場の課題や危機管理などの広報のポイントを解説します。

「植木等展」の展示会場。映画のポスターなどのほか、所ジョージさんや大地真央さんのコメントも上映された。

大学広報では、在校生の活躍や学生スポーツの結果を取り上げることはもちろん、教員の研究分野やその取り組みの広報にも注力します。一方、大学のステークホルダーの中で大きな部分を占めるのが卒業生です。在校生とは在学中の4年間の関わりですが、卒業生とは卒業後から長く関係が続きます。

その意味でも著名な卒業生の存在は、大学のイメージに与える影響が大きいです。大学のブランドイメージ構築のためにも、こうした卒業生の活躍を広報としてどのように取り扱うかが重要なテーマになります。

そこで今回は、東洋大学で10月に開催した、卒業生の功績をたどる展示会について書きたいと思います。

1964年の顔・植木等

公共広告を扱うACジャパンの、2020年東京オリンピックを意識した「ライバルは、1964年。」というキャンペーンCMを目にされた方も多いと思います。昭和を意識したセピア色の写真の中に混ざって大きく取り扱われている人物が「植木等」。昭和に青春時代を過ごした方であれば、映画「無責任」「日本一」シリーズやコミックバンド「クレージーキャッツ」の活躍をご存じかと思います。

2020年の東京オリンピックを盛り上げるべく、高度経済成長期だった1964年の東京オリンピックとリンクさせた広告企画を数多く展開しており、先のCMもその一環として放映されたものでした。

実は植木等さんは東洋大学の1947年、専門部国漢科の卒業生。戦後復興から高度経済成長へ変貌を遂げる当時の日本を代表するエンターテイナーとして活躍されました。2017年は植木さんの生誕90年、没後10年。そして9月からはNHKの土曜ドラマ『植木等とのぼせもん』が放送されるという、広報としては絶好のタイミング。

東洋大学としても植木さんの功績を今一度振り返り、こうした先輩がいたことをお伝えしたいという動機から、植木さんの展示会を私たち広報課が主体となって企画・実施しました。

しかし、ただ単にエンターテイナーとして植木さんを紹介しても意味がありません。大学とのつながりは必須として、学術的な落とし込みも必要だろうと考えました。企画の立ち上がりは7月後半。10月開催に向けて急ピッチで準備を進めることになりました。

幅広い年齢層へ届けるには

ミュージシャン・俳優の星野源さんが先のCMタイアップ曲を歌ったり、女優ののんさんが雑誌の企画で植木さんのコスプレをしたり。感度の高い彼らの憧れの存在として植木さんが注目を集めています。一方『日経ビジネス』の表紙を飾るなど、昭和を懐古するイメージとして植木さんが登場することも多く、世間の皆さまの目に留まることも度々ある状況です。

しかし、リバイバルで大ヒットした「スーダラ伝説」ですら1990年、今から30年近くも前の話です。当然今の多くの大学生たちは植木さんの存在を知りません。学生の親御さん世代でもその認知はどうでしょうか。そうした状況を考え、この展示会で植木さんが卒業生であったことをお伝えするためには、やはり広報的なテコ入れが必要だと考えたのです。

そこで、この展示会開催では、NHKドラマとのタイアップは必須とし、毎年秋に卒業生が集まる「ホームカミングデー」の開催時期に重ねることを企画段階から盛り込みました ...

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