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記者の行動原理を読む広報術

紙面ごとの性格を把握し エピソードを掘り起こす

松林 薫(ジャーナリスト)

元号変更はメディア露出のチャンス。平成絡みのネタも、記者の担当を把握すれば掲載確度が一気に高まる。

2019年5月から元号が変わることが決定し、「平成のカウントダウン」が始まった。最近はメディアでも、約30年間続いた平成時代を振り返る企画が増えている。こうした、「大きな動き」が予想される時期には、記者も普段の「ニュース」を追いかけるのとは少し違った能力を問われることになる。広報の側にとっては、価値がないと諦めていた「古くなったネタ」や「小さなネタ」も大きく取り上げられる、またとないチャンスなのだ。

「平成」に絡めて露出を狙え

一般に、記者がニュース価値を認めるのは「NEWS=新しいこと」である。しかし、紙面には回顧企画のような読み物系の記事(長尺モノともいう)も存在する。記者はそれらの「読ませる」記事を書くために、「エピソード(場面描写や個人のコメント)」も必要としているのだ。言い換えれば、取り上げるテーマを象徴する印象的な話であれば、古くても「ネタ」になり得るのである。もちろん、その中に「今(=NEWS)とつながる要素」が含まれていればもっとよい。

平成の大ニュースといえば何だろう。バブル経済とその崩壊、阪神・淡路と東日本の大震災、中国の台頭などが思い浮かぶ。流行や社会現象を振り返れば、Jリーグ発足、IT革命、携帯電話の一般化などが挙げられるだろう。ローカルメディアには「地元の大事件」も重要になる。こうした時代の象徴や節目に、自社がどう関わってきたかを振り返れば、必ず面白いエピソードがあるはずだ。

記者は、「今だから明かせる金融危機時のドラマ」「ネットの普及でビジネスモデルが崩れ、業態転換を迫られた経験」など平成を振り返るテーマで語ってくれる人を、苦労して探すことになる。こうした現場のエピソードは、生々しくて面白ければ、大企業や有名経営者の話でなくても取り上げられる可能性がある。歴史のないベンチャーでも、トップの前職での経験や、起業を決意するきっかけなどに絡めれば参入の余地が出てくる。

平成のカウントダウンは長丁場だ。記者はこれから、そうした企画案の提出やネタ探しを何度も求められることになる。メディア間で、切り口やエピソードの面白さをめぐる競争も激しくなるはずだ。

裏返せば、ニュース分野では知名度の低さなどで苦戦しがちな企業でも、露出度を高めるチャンスである。取材が本格化する前に自社に眠るネタを「棚卸し」し、記者との雑談などでそれとなく語っておけば食いついてくる可能性がある。例えば、広報誌で「我が社の平成10大ニュース」「平成、あの日、あのとき」などといった企画を立て、一般社員やOBから公募する手がある。この機会に社史を読み返したり、編さんしたりしてもいいだろう …

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